日本とは異なる中国のトイレ事情
日本の安倍政権においては働き方改革が進められているが、中国の習政権では「トイレ改革」が進められている。冗談ではなく文字通りのトイレ改革だ。2017年11月27日、某テレビ局のニュース番組内で中国のトイレ事情が取り上げられ、習近平国家主席が重要指示を出したと報じられた。中国のトイレ事情を紹介しよう。
中国の「トイレ改革」
中国では不衛生なトイレが多く、外国人観光客の評判が悪いことから、政府は2015年からの3年間で観光地やレストランできれいなトイレを提供する「トイレ改革」を進めている。国家観光局は、経済が衰退した地域の約10万箇所の公衆トイレの改善に、4年間で2900億ドル(約30兆円)を投資すると発表し、トイレを新しく建設しているのだ。
2017年11月26日に習国家主席は公衆トイレ美化運動トイレ改革についてさらなる改善を求める異例の重要指示を出し、改革の強化を指示した。興味深いのは、このトイレ改革は都市部に限らず農村地区にまで拡大されていることだ。
トイレ改革の主要な対象となるのは観光スポットなどの公共トイレである。最近では、山奥のトイレでもない限り、ほとんどの場所では多くの観光客が受け入れられるトイレになっている。都市部、農村部に関係なく、トイレの美化が進んでいるのだ。
(出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23944360X21C17A1FF1000/)
古い公衆トイレは「ニーハオトイレ」
中国の公衆トイレは仕切りがなく、用を足す際となりの人と顔を合わせることになるため「ニーハオトイレ」と呼ばれしばしば揶揄されてきた。床に穴が並んでいるだけの仕組みのため悪臭も強く、外国人観光客からは敬遠されていたのだ。
また、男性用の小便器も間隔が狭く、となりの人と身体がくっつくほどの距離だ。さらに、水洗でも紙は流さずゴミ箱に捨てる習慣がある。中国の公衆トイレは水の勢いが弱いため、詰まるのを防ぐためにトイレットペーパーは流さないのだ。
一時、日本では中国人観光客のトイレマナーが悪いという評判が立った。水洗トイレの使い方が分からずに汚物が流されていなかったり、トイレットペーパーが床に捨ててあったりするのも、以上のような背景を考えると理解できる。
洋式トイレには座らないことも
近年徐々に変わってきているが、少し前は洋式トイレの便座に座ることに抵抗がある中国人がいたようだ。「不特定多数の人が使うトイレに肌を触れたくない」という感覚から、洋式公衆トイレでは座らずに跨いで用を足したり、便座に乗ってしゃがみ込むスタイルで洋式を和式のように使用したりする人もいた。そのため、本来座るはずの便座が汚れていたり、そもそも便座が壊れて無くなっていたりすることもあったのだ。
公衆トイレに顔認証システムを導入
「トイレットペーパーが大量に盗まれた」という背景から、北京の天壇公園のトイレでは、機械が人の顔を認識してトイレットペーパーを自動で配るシステムを試験的に導入している。
天壇公園のトイレにあるトイレットペーパーは現在すべてしまい込まれており、6台の機械が顔認証システムを通じて紙を約60cmずつ配布する。利用者が自分の取り分以上に紙を取ることができないようにするためだ。
万が一紙が足りなかった場合は、1度につき2回まで紙を取ることができる。1人合計で120cm使用できるということだ。それでも紙が足りなければ、追加の紙をもらうために9分待たなければならない。
(出典:https://www.sohu.com/a/129529895_624802)
家にトイレが無い
中国は都市部でも貧富の格差が激しく、大きなタワーマンションのすぐとなりに質素な市営住宅が建っていることもある。都市部でもこういった古い集落や住宅街には個別のトイレがなく、共用の古い公衆トイレが使われているケースがあるのだ。
日本の古いアパートでも共同トイレ、共同風呂のところがあるが、近年では少なくなっている。一方で、中国の貧しい地域では用を足すためわざわざ外にある共用のトイレまで行かなければならないこともあるのだ。
一般家庭のトイレ改革
数年前より訪日中国人旅行客による温水洗浄便座の爆買い現象が起こった。現在一般家庭でもトイレ改革が進んでいるのだ。以前は温水洗浄トイレがあるのは富裕層に限られていた。しかし最近では、一般的な家庭でもこれまでのシンプルで殺風景な光景から一転し、多機能で清潔なトイレが普及してきている。
中国にある日本ブランドのショールームには、中国で生産された中国向けの洗面台やトイレが展示されている。富裕層向けの製品だと蛇口等が金色に輝いていたり、日本との文化の違いも感じられる。
中国には日本と異なるトイレ事情があったものの、現在はトイレ改革により大きく変化しつつあるのだ。