中国の3大決済方法 銀聨・支付宝・微信支付
目次
微信支付が王者支付宝に接近! 銀聯は実店舗に加えネットでも拡大
中国で現金が消える。そんな時代がもうすぐそこに来ているのかもしれない。2015年からインターネット上の電子決済サービス大手、支付宝(アリペイ)と微信支付(ウィチャットペイ)が相次いで実店舗に本格参入しているのだ。
中国国内の電子決済サービスは今、激しい利用者争いを繰り広げている。また従来から中国国内の貧困層にまで幅広く浸透しているデビットカード銀聯(ユニオンペイ)は、実店舗に加え、増えるネット取引にも利用され、用途を拡大しているのだ。
オンライン決済では首位である支付宝を微信支付が席巻し、銀聨も引き続き拡大している。実店舗での支払いでも銀聨に代わって支付宝、微信支付が用いられるようになってきており、オンライン支払い、実店舗支払いともにこの三者が一歩も引かない状況が続いているのだ。
中国の3大決済方法の概要
銀聯 | 支付宝 | 微信支付 | |
決済のタイプ | デビットカード | オンライン決済サービス | オンライン決済サービス |
設立時期 | 2002年 | 2004年 | 2014年 |
会社 | 中国銀聯 | アリババグループ | テンセント |
設立目的 | 加盟銀行間をオンラインで結ぶことで各銀行間の決済を実現 | タオバオをはじめとしたネット通販サイトの決済 | 微信内でのオンライン決済、QRコード決済 |
中国オンライン決済シェア(2018年) | 約10% | 約50% | 約40% |
主な特徴 | 与信審査や信用情報を得る必要がなく、誰でも利用することができる。 | 買い手は決済前に商品を受け取れ、売り手は代金未収リスクを回避できる。 | 微信と連携したサービス。 |
利用者数(発行枚数) | 13億人以上 | 5億人以上 | 4億人以上 |
加盟店(業務提携先) | 世界2,600万店以上 | 中国170の金融機関と提携 | 中国などの金融機関、小売店 |
主な利用先 | 量販店、百貨店、ショッピングモール、ドラッグストア、ホテル、大手銀行ATMなど | 淘宝、Tモールをはじめ46万以上の中国企業のウェブショップ、オンラインゲーム、通信、ビジネスサービス、チケット販売、公共料金などの決済 | ウェブショップ、コンビニ、総合スーパー、レストラン、駐車場、チケット販売、公共料金などの決済 |
利用可能な国 |
日本、米国、韓国、シンガポール、ドイツ、フランス、オーストラリアなど150カ国以上 |
いくつかの主要外貨で取引サポート | 中国、日本、韓国 |
日本でのサービス | 三井住友銀聯カード、ANA銀聯カード、MUFG銀聯カード | Alipay国際決済 | 微信支付 |
(出典:http://japan.hani.co.kr/arti/economy/22722.html
https://baike.baidu.com/item/%E6%94%AF%E4%BB%98%E5%AE%9D/496859?fr=aladdin
https://baike.baidu.com/item/%E5%BE%AE%E4%BF%A1%E6%94%AF%E4%BB%98)
決済だけじゃない!割り勘や資産運用も支付宝、微信支付でできる
支付宝、微信支付は中国の実店舗の電子決済サービスを独占していた銀聨を脅かすまでに普及した。そのすごさは何でも決済できてしまうだけではない。ネット通販の代金や公共料金、チケット代はもちろん、モバイル決済機能を通じて小売店や飲食店といった加盟店の実店舗でも決済できるのだ。
日常生活に必要なサービスのほとんどを支付宝や微信支付で支払うことができる。また、お年玉など現金のプレゼントや割り勘支払いの際に、支付宝や微信支付を通じて相手に電子マネーを支払うことも可能だ。
支付宝ではほとんどの手数料が無料であるだけでなく、中国国内の銀行口座からリアルタイムに支付宝にチャージできる。銀行口座への返金も迅速に行える。お金を預金サービス「余額宝(ユエバオ)」にチャージしておくだけで利息がもらえるサービスも存在する。支付宝の利便性やお得さが多くのユーザーをひき付けているのだ。
微信支付では、中国版LINEと言われる微信(ウィチャット)のコミュニケーション機能を利用した取引が頻繁に行われている。知人やソーシャルバイヤーとタイムリーに買い物の情報交換ができ、その場で注文を受けて代金を受け取れるのだ。
現金よりも銀聨カード?
支付宝、微信支付がインターネットユーザーにしか普及していないのに対し、銀聨カードは中国国内でより多くのユーザー層に普及している。中国人の財布に現金が入っていないことがあっても銀聨カードは入っているといってもいいだろう。
中国で銀聨カードはVISAやMasterCard、アメックス、JCB、ダイナースクラブの5大国際ブランドよりも普及しており、中国のクレジットカードシェアの大部分を占めている。政府の後押しもあって中国全土、富裕層から低所得者層まで幅広く浸透しており、これまで中国のカード決済サービスを独占してきたブランドと言える。
銀聨カードは中国での普及率の高さに加え、世界中で利用でき、ネット上での決済サービスも整備されているのが特徴だ。多くの中国人が海外旅行での買い物やネット通販の代金支払いに利用するなど、利用用途が広がっている。
勝者はいない? 戦いの舞台は世界へ
支付宝、微信支付、銀聨という三国志をも彷彿とさせる戦いの行方は、この先どうなるのだろうか。現在のところ決着はつきそうにない。その理由は、中国人はこれら3つの電子決済サービスを使い分けていると考えられるからだ。
中国全土や世界中で利用できる銀聨カードはなくてはならないものだし、インターネットユーザーであれば淘宝(タオバオ)や天猫(Tモール)などでのネット通販の決済には支付宝は欠かせない。また、コミュニケーションツールとして幅広く普及している微信での送金や支払い機能も捨てがたいだろう。
中国の電子決済サービスの利用者は生活スタイルによってそれぞれのサービスを使い分けている。そんな中、支付宝、微信支付、銀聨は中国国内でのサービス向上に取り組むとともに、海外市場の開拓にも力を入れているのだ。
日本では今いずれのサービスも利用でき、迅速かつ円滑な決済により中国人観光客などの買い物に役立っている。訪日中国人観光客の消費意欲を向上させ、インバウンド対策として成果を上げているのだ。
今後中国人が越境ECなどのネット通販や旅行などを通じて海外に一層目を向けていくことが考えられる。そういった時に電子決済サービスがどのように中国と外国の架け橋になるのかがキーポイントだ。それぞれの強みを活かした取り組み、ニーズに応じたパートナーとの連携が求められている。