小紅書(RED)はどのようにしてソーシャルECアプリを立ち上げたのか?
去年、フランスの最高級ジュエリーショップが全国各地にある店舗(全部で10店舗以下)でアンケートを実施し、クレジットカードでジュエリーを購入した顧客に、どのように新商品を知ったのかを質問しました。店舗からの答えは意外にも、90%もの人が「小紅書」を通して知った、というものでした。
小紅書とは一体何でしょうか?人民日報は「アマゾン+インスタグラム」だと結論づけています。小紅書は最近、次の大きな融資を現在検討中だと発表しました。
上に述べたような、ニッチで高価な格式高いジュエリーブランドは小紅書に注目し始めたようです。
ファン・ビンビンやリン・ユンが小紅書での美容ブロガーとして活躍しており、彼女たちがフェイスマスクや美容機器を宣伝するたびに、そうした商品は売り切れになります。数々のブランドも、こうした成功は小紅書が大量の記事広告を利用した結果なのか、それともユーザーが(上に挙げた2人のような)小紅書の大V(著名なインフルエンサー)に影響を受けた結果なのか、分からないようです。
小紅書とは?微博(Weibo)+天猫(T-mall)?
中国では、小紅書はソーシャルECアプリに分類され、2つの部分で成り立っています。一方の部分は「コミュニティー」で、買い物をした感想をシェアすることができ、もう一方は「オンラインショッピング」で、実際に買い物をすることができるのです。中国の例で考えるなら、微博(Weibo)と天猫(T-mall)の複合体と考えることができるでしょう。
コミュニティーの部分においては、ユーザーは新しく買った良い製品の使い心地や、限定版の商品を手に入れたときの興奮、海外旅行の攻略法(遊ぶ場所やホテルの情報)など、ありとあらゆる感想をシェアすることができます。
ユーザーは、そうした情報を見たり検索したりできます。微博(Weibo)と同じように作者をフォローしたり、投稿にコメントしたり、いいね!ボタンを押したり、お気に入りに追加したりできます。
小紅書の「オンラインショピング」の部分に関しては、化粧品やフェイスマスク、美容機器からおやつやパジャマ、紙おむつに至るまで、ありとあらゆるものが揃っています。
オンラインショッピングとコミュニティーは切っても切り離せない関係にあり、コミュニティー内で勧められたり話題に上がったものは、ユーザーの衝動的な購買意欲を刺激します。小紅書のオンラインショップの中にそこで触れられた商品があれば、ユーザーはすぐに購入するでしょう。どんなブランドをオンラインショップに入れるかに関しては、コミュニティー内での人気度によって決まります。
北京外国語大学出身の瞿芳は、2013年ベルテルスマン社を退職し、親友の毛文超と共に小紅書を立ち上げました。彼女らは創業の地を上海市内に定め、その年の12月に小紅書はインターネット上で公開されました。その時にはすでにMogujie (蘑菇街)やMeilishuo(美丽说)などの、女性ユーザーのためのファッションやショッピング情報のコミュニティーが存在しており、アマゾン+インスタグラムの図式が出来上がっていました。
小紅書の初期のユーザーコミュニティーは、購買能力や質が高レベルで、同時期のライバルたちよりも一歩先を進んでいました。
2015年から2016年、小紅書のCEO毛文超は様々な場面でそのユーザーの特徴を語りました。その説明によると、女性が占める割合は70%から80%で、年齢は18歳から30歳までの間、学生やホワイトカラー層が多いようです。一級都市に住んでいるユーザーが50%にも上り、比較的にエリート層の人が多くなっています。大多数のユーザーは、国境を越えて旅行したり買い物をしたいと願い、またその能力を備えている、いわゆる「白富美」(色白でお金持ちで容姿端麗)の人たちで成り立っています。
オンライン上で公開されると、小紅書は2013年の年末に「香港ショッピングガイド」を始めます。当時、
ちょうど香港は海外でのショッピングエリアとして人気があり、クリスマスのセール期間中ということもあって、その「ガイド」は爆発的にヒットしました。こうして初期のユーザーが増えたのですが、そうしたユーザーが全世界に広がるにつれ、小紅書のコンテンツも日韓、シンガポール、アメリカ、ヨーロッパ、全世界をカバーするようになりました。
小紅書のコンテンツの形式は「ノート」と呼ばれます。タオバオの商品説明とは異なり、この「ノート」はユーザー目線で書かれています。
例えば、スキンケア用品の「ノート」ですが、自分の肌質や使用するときの組み合わせ、使った感想などが見られるようになっています。「アムウェイ」を勧める妹のことを姉が信用するかのように、ユーザーはそこでリコメンドされる商品やコンテンツを全く信用しています。売り手が声を張り上げてどんなに頑張ったとしても、口コミにはかないません。もしそれが友達のリコメンドだとしたら、迷う理由はないでしょう。
それにしても、なぜ人はそこまで時間や労力を使って、別の人にヒントを与えようとするのでしょうか?一つ目の理由として、高級品を買った後それを自慢したいというのは自然な欲求だからです。もう一つの理由は、小紅書がユーザーに対して、いいね!ボタンを押したり、お気に入りに追加させたり、コメントを残すことを強調しているためでしょう。
筆者の体験で言うと、時々アプリを開いて自分の投稿に「いいね!」がついていたり、「お気に入り」に追加されているのを見ると、確かに大きな達成感を感じ、この達成感のために、是非また書きたい!と思うようになりました。
自営のB2C方式を採用
初期の頃の小紅書の「ノート」の内容は主に美容やコスメ、バッグなどに集中していました。それから次第にペットや求人、旅行などに関してシェアされるようになってきました。
現在では、小紅書は「海外で見つけた良いモノ」というオープニングメッセージが「生活にタグ付けしよう」に変わっています。ユーザーにもっと多くの時間を割いて欲しいと考えたのでしょう。取り扱う範囲が広くなり、書くことの出来る内容も増えました。オシャレでコンテンツも質が良く、女性のユーザーも多くなったので、どこでもかしこでも小紅書でのショッピングを勧められるようになりました。ユーザーが商品の感想を書く度に、「リンクを貼っていただけませんか?」「どこで書いましたか?」という山のような質問がコメント欄に殺到します。ユーザーにわざわざタオバオや天猫やジンドンを開かせるのではなく、自分でその商品を売ってしまおう。小紅書はこのようにしてオンラインショッピングを始めたのです。
2014年12月、小紅書のオンラインショッピング機能がアップされ、始めは、価格は安いけれども在庫に限りがあり、早い者勝ちという「購買部」的な形式での販売方法が採用されていました。
中にある商品は、コミュニティーの「ノート」の中で何回も言及され、単価が低く何回も購入されやすいものが多くなっています。販売量に関しても、最初に仕入れる在庫をよくコントロールして、まず市場を調査します。現在に至るまで、小紅書のトップページには「早い者勝ち」キャンペーンが依然として載せられています。
サプライチェーン管理の方法に次第に慣れてきたところで、小紅書は自営のB2C方式を採用し、国外のメーカーと直接協力し、国内に保税倉庫を設立しました。この方式のリスクは、事前に在庫を買い占めておかなければならないことなのですが、この場面で小紅書のコミュニティーのコンテンツが役に立ってきます。どんな製品に関するコンテンツがユーザーの反応が良いかを見極め、それをプラットフォームで紹介するのです。この時「ノート」では、ビルトインで購入用リンクを追加でき、ワンクリックで購入ページにアクセスできるだけでなく、閲覧数を購入数へと変える確率を高めることができます。
小紅書のオンライン販売額は相当なもので、オフィシャルウェブサイトの発表によると、2015年末、オンライン販売を始めてわずか6ヶ月で7億元の売り上げを達成したようです。2017年6月の記念日には、2時間で一億元もの売り上げがありました。同じ年、人民日報は小紅書について、売上高が過去2年間で100億元を超えたと報告しました。
素晴らしい成果の中で、さまざまな懸念もあります。 オンライン販売では、商品が本物か偽物かに関してとやかく言う人はつきものです。多くのクレームやいろいろな不満に直面しますし、どのように問題を解決しユーザーを安心させるかを考えなければなりません。発展していく速度が速いほど、ストレスも多くなります。特にB2Cのオフィシャル協力方式だと、この場合のオフィシャルとはブランドなのか、バイヤーなのか、代理店なのかといった疑問が生じてきます。コミュニティー内のコンテンツの問題もあります。影響力が大きくなるにつれて、小紅書のインフルエンサーも次々に出現し、様々な店舗やそれに伴う記事広告も増えてきます。そうなると、ユーザーの「ノート」に対する態度も慎重になってくるのです。
有名人たちの活躍
世界の中でも、小紅書は「白富美」の密度が高い場所と言えるかもしれません。こうした「賢いホワイトカラー」の人たちは小紅書上の良質なコンテンツに一役買っています。しかし、こうした人々は、ある意味「ずる賢い」とも言えます。小紅書のオンラインショップにある商品の価格と他のチャネル、例えば信頼している代行購入者や友達の価格を比較して購入するのです。自分で海外に買いに行くことさえあります。
様々な兆候を見ると、小紅書はノートを「書く」人よりも、通常売り上げに直接貢献する「読む」人の方に注意を向けているように思えます。2級、3級都市、ひいては4、5級都市の人々はブランドや購入チャネルについての知識が限られています。95年生まれ以降の若者、大学生か大学を卒業したばかりの若者は、小紅書のKOL(Key Opinion Leader)たちのファンシーな生活を追い求めています。しかし、彼女たちはそうしたオピニオンリーダーたちと同じような商品や生活を楽しむのに便利なチャネルを持っていません。彼女たちにとって、「先輩」たちの経験の代表格である小紅書を通して、トレンドやセンスから「はみ出さ」ないようにしているのです。
そうしたユーザーをもっと引き寄せるために、有名人たちが活躍します。「ファン・ビンビンのリップ講座」や「リン・ユンのライブ洗顔」などのコンテンツは、微博(Weibo)で有名人の追っかけをしたり、タオバオでそうした有名人が持っているものと同じモノを探したり、「偶像練習生」(ボーイズグループのサバイバル番組に出てくるアイドルたち)のために熱烈に「コール」をしたりするような女の子たちを引き寄せているのです。
彼女たちは小紅書の「ノート」を見ることによって、そのオンラインショップでショッピングをし、売り上げを伸ばすのに貢献しています。その一方で、有名人たちの登場によって一般ユーザーの露出の機会が減少し、古くからのユーザーの流出を招く危険性がある、と言う意見もあります。単価が高いユーザーは気難しさや賢さがあり、単価の低いユーザーは購入量としては多いものの、ブランドが勝ってほしいと望む贅沢品を買う余裕はありません。
ソーシャルECアプリの「新規感」はまだまだ続くのでしょうか?小紅書はコンテンツと販売量のバランスをどのように取るのでしょうか?アマゾンにブロガーは出現するのでしょうか?聞くところによれば、インスタグラムも販売戦略を始めたようです。
[原文 : http://www.opp2.com/83676.html]
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