簡体字と繁体字について今一度考えてみる
簡体字圏と繁体字圏の境がなくなる!?
中国語で文章を書くとき、簡体字か繁体字かどちらを使えばよいのか迷う人も多いのではないでしょうか。日本の東京や大阪などの大都市を歩いていると目に付くのが中国人旅行者向けの案内板やガイドブックですが、よく見ると中国語が2種類書いてあるのに気付くと思います。簡単に言うと、難しい漢字のほうが繁体字で、簡単な漢字のほうが簡体字です。最近は簡体字圏の人が繁体字を使ったり、繁体字圏の人が簡体字を使ったりするなど、使用地域や使用方法も複雑化していて、中国に関して素人の人からすると、その使い分けはほぼわからないでしょう。いったいその違いは何なのか、どうして2種類の文字が存在するのか、などを見ていきたいと思います。
簡体字、繁体字の主な使用状況
簡体字 | 繁体字 | |
字体 | 新字体 | 旧字体 |
年間訪日数 | 約500万人 | 約520万人 |
使用人口 | 約13億人 | 約3000万人 |
主な使用地域 | 中国、シンガポール、マレーシア | 香港、台湾、マカオ |
まず簡体字と繁体字の違いを説明しましょう。繁体字は中国に昔からある漢字、日本語でいう旧字体です。簡体字は繁体字を簡略化したもので、日本語でいう新字体や常用漢字です。それぞれの使用地域は、繁体字が台湾、香港、マカオ、北米を中心とする華僑の人々で、簡体字が中国内陸部、シンガポール、マレーシア、アジアを中心とする華僑の人々です。華僑とは、主に中華系のルーツを持ち、中国の文化や事業を受け継いでいる人々を指します。
中国ではもともと繁体字しか使用されていませんでした。なぜ簡体字ができたかというと中国は日本とは違い識字率が低かったからです。中国政府は、より多くの人に文字を普及させるため繁体字を簡単にした簡体字を導入しました。中国内陸部では簡体字のみが主に使われますが、正式文書など公式文ではしばしば繁体字が使われます。また、中国内陸部の新聞や広告文字などにも繁体字で文字を表現することがありますが、これは“オシャレ”や“演出”のためであり、日本でいうところのアルファベットのようなものです。
簡体字と繁体字の比較の例
日本語 | 簡体字 | 繁体字 |
歓迎 | 欢迎 | 歡迎 |
飛行機 | 飞机 | 飛機 |
ブログ | 博客 | 部落格 |
雑誌 | 杂志 | 雜誌 |
売買 | 买卖 | 買賣 |
ネット動画、観光客増で簡体字がじわり浸透
香港や台湾では、学校教育から社会生活、公文書まで主に繁体字が使われていますが、観光客の急増やインターネットによる動画の流入など中国内陸部からの影響で簡体字がじわじわ浸透してきています。案内板やレストランのメニュー表にも簡体字が見られるようになったほか、動画サイトの翻訳の字幕で簡体字を習得するインターネットユーザーもいます。また、筆談や速記が求められる医師などの職業の人でも簡単な簡体字を使用することが多いようです。
見た目の良さなどから繁体字人気も
では今後、簡体字が台頭し、繁体字が消え行く運命にあるのかというと、そう単純なものでもなさそうです。インターネットの普及と国学への関心が高まる中、繁体字に興味を持つ中国内陸部の若者も出てきています。見た目の良さや漢字の持つ意味をメッセージに込められるなど理由から中国版Twitterと言われる微信(Weibo)では、繁体字が飛び交うことも少なくないようです。
中国語圏では、簡体字を使う人、繁体字を使う人、そして簡体字と繁体字の両方を使い分ける人がいます。日本人は簡体字と繁体字のどちらの文字を使用すればよいのでしょうか。インターネットの登場などで中国内陸部と香港、台湾などの文化が混ざ合う中、正確に伝えたいメッセージや情報を発信していくためには、やはり簡体字と繁体字の両方を使いこなせることに越したことはないでしょう。
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