発展する中国の工業B2B取引サイト① 鉄鋼の「找鋼網」は専門B2Bのパイオニア。
「找鋼網」は2018年9月、IT巨頭テンセントと提携したことで話題となった。同社は、慧聡網、アリババ1688など、総合B2Bサイトしかなかった時代、専門B2Bネット通販業態を切り開いたパイオニアである。同社の成功は、「找塑料(プラスチック)網」「找玻璃(ガラス)網」「找油網」「找化工網」「找煤網」などが相次いで出現する契機となった。
これらサイトの創業者たちは、シェアサイクル、フードデリバリーのように、イノベーションを起こし、世間の脚光を浴びたわけではない。しかし、B2Bは浮き沈みが激しくない分、着実に歩みを進めてきた。これから業界別に代表的なサイトを紹介していきたい。
工業製品B2B取引サイトのパイオニア「找鋼網」
找鋼網は2012年3月、創業者の王東らによって上海で設立されたB2B鉄鋼取引サイトである。これまでの歩みは以下の通り。
2012年5月、正式アップロード、初日の取引は鉄鋼167トン、取引価格は74万元だった。
同年12月、1日1万トン、5000万元を突破。
2013年12月、紅杉資本、経緯中国などの有力投資機構から3480万ドルの融資を受ける。
2015年7月、1日取引量が18万トンを突破。
2016年5月、家電大手ハイアール集団と提携し、共同でハイアール越境ECプラットフォームを製作。
同年6月、 韓国に子会社設立。
同年7月、 「鉄鋼行業新媒体連盟」を組織、その事務局となる。
同年7月、 シームレス鋼管トップの「天津鋼管集団」と提携。
同年9月、 ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦に子会社設立。重慶市、冷間圧延トップ「翆華集団」と提携、共同プラットフォーム「胖胖狗」を設立。
2017年6月、微衆銀行(テンセント系)と提携。
2018年9月、テンセントと提携、合弁会社「胖猫雲(上海)科技公司」を設立。
各部門のトップメーカーと提携関係を結んでいる。彼らの方が找鋼網に価値を見出しているのだろう。連合を結成し事務局を務めるなど、鉄鋼EC取引の発展に尽力している。テンセントとの提携も、トップ企業と組むという流れの一環かも知れない。
找鋼網の公式サイトには「拓展新空間、開創大格局」というスローガンが出てくる。鉄鋼取引の新空間を開き、業界の構造を変える、という意味で、業界パイオニアとしての抱負を感じさせる。
サイトでは商品分野ごとの価格水準が、都市別にわかるようになっている。直近の取引価格も表示され、一見客を騙して暴利を得ることは、もはや不可能だ。相対的な駆け引き中心の中国的取引から、公正な価格形成への移行に間違いなく貢献した。
官製サイト「中国聯合鋼鉄網」
鉄鋼業界にはもう1つ、中国聯合鉄鋼網(以下中聯網)というサイトが知られている。これは、中国鋼鉄工業協会が主導し、上海宝鋼集団、馬鞍山鋼鉄、包頭鋼鉄、首鋼唐山鋼鉄、武漢鋼鉄など、鉄鋼大手16社の共同出資により制作した、鉄鋼業の総合WEBサイトである。国家発展計画委員会の資金サポートを受けた“官製”プラットフォームである。実際の運営は、鉄鋼卸商の北京中聯鋼電子商務有限公司が、請け負っている。
2005年、スタート当時の中聯網は、業界の分析とインターネット取引の推進が業務であった。ビジネスサポートが中心で、売買網や誠信通と同じような役割だった。再び動きが活発かするのは2013年である。これは找鋼網の動きに触発されたことは想像に難くない。各地でさまざまな取組みをしたものの、結局2015年4月に找鋼網と戦略提携を結び、共存共栄を目指すことにした。
現在は、交易網…取引き、採購網…買付け、資訊網…情報、データ、供求網…宣伝、PR、技術設備網…設備管理、会展培訓網…会議、教育関連、の各サイトを運営している。
まとめ
中聯網は出資16社を含む、国有大企業向けサービスの印象が強い。由緒正し過ぎて中小業者には敷居が高そうである。
これに対し找鋼網は、業界改革の旗手を任じ、最初から気迫が違っている。そして各社単独のサイト作りでは、みな找鋼網のサポートを得ている。鉄鋼B2B取引サイトは、找鋼網を中心に回っている。今後もネットワーク、取引量ともに、拡大していくのは間違いなさそうである。