ショートビデオの「快手」、中国の紅白歌合戦「春節聯歓晩会」でさらにブレイク?TikTokと雌雄を決する年に
2020年は短視頻(ショートビデオ)アプリの行方が定まる決戦の年、と見られている。競争は白熱化する一方だ。今年に入ってからも「B站」の株価急騰、「TikTok」のDAU4億、「快手」は3億突破など、景気のよいニュースが飛び交った。その中から、第2位に位置する「快手」を取り上げていこう。最近では、世界的ヒットアプリTikTok以上に発信が多く、元気そのもののように見える。
快手、晩会のスポンサーに
中国にも「春節聯歓晩会(晩会)」という紅白歌合戦のような国民的娯楽番組がある。放映は西暦12月31日ではなく、中国歴の大晦日(除夕という)である。2020年は1月24日の金曜日に当たる。今年で37回目、歴史は紅白の半分だ。中国国営テレビCCTVを中心に放送され、2001~2019年の平均視聴率は30%を超える。2019年は、国内外で11億7300万人が視聴したとみられる。
紅白歌合戦との最大の違いは、CMの有無である。CCTVはしっかり広告を取る国営テレビだ。とくに晩会にはその高視聴率に、IT巨頭が群がり、激しい争奪戦となる。これまで、微信(Wechat)、支付宝、バイドゥ等が、単独契約に成功している。2020年は、ついに快手もこの仲間入りを果たした。ただし営業費用は高騰の一途である。今年は11億元(175億円)の大盤振る舞いとなりそうといわれる。快手がそこまでして、晩会広告に賭けるのはなぜだろうか。
快手の収益構造
某調査機関の推計によれば、快手の収益構造は、ライブ放送300億元(5660億円)、広告100億元(1880億円)、直営ネット通販50億元(890億円)の合計450億元(8500億円)
である。このうち大きく伸びているのは広告と通販である。
ライブ放送では、ビジネスモデルの限界が見え始めている。すでにユーザーは日一日と理性的になり、彼らを再度高揚させるのは容易でない。熊猫直播(Panda TV)は、すでに破産の憂き目にあい、人気の網紅(KOL、インフルエンサー)も浮き沈みが激しい。上場に成功したライブ放送「虎牙」「斗魚」の株式時価総額は30~40億ドル程度に過ぎない。
これに対して昨年、テンセントをリードインベスターとするシリーズF融資を受けた結果、快手の企業価値はすでに286億ドルと推定される。彼らとは別格の新ビジネスモデルを構築しなければならない。
快手の広告収入
その一方、快手の広告収入は大幅に増加している。当初の快手は、ユーザー体験を優先し、広告挿入にはユーザー離れを招きかねない、として慎重だった。しかし2018年10月ごろから姿勢を変化させ、広告募集のプラットフォームを立ち上げた。それはうまく機能し、ショートビデオ閲覧の前後に、広告を見るユーザーは10%から60%に増加した。広告収入は1年で20億元(317億円)から100億元(1588億円)に激増し、快手の収益構造を変えた。2019年9月には、広告収入150億元(2380億円)をめざすと表明した。
また2018年にスタートした直営ネット通販は、1年でGMV200億元(3170億円)に達したと見られる。これは全国ネット通販トップ100ランキング(海豚智庫)では13位相当である。
まとめ
快手は、ショートビデオにおいてTikTokやB站等との激しい競争を強いられている。今後快手は、来るべき株式上場へ向けて、自らの理想的な立ち位置を表現しなければならない。そのためには、広告、ネット通販分野を確立し、目に見える成果を求められている。晩会のスポンサー契約を、そのための起爆剤としたいのだろう。晩会の評価に注目したい。