中国越境ECに拍車が掛かるか!! 中国が消費財の輸入関税を軽減
中国のFTA(自由貿易協定)戦略は、政治・経済・外交・安全保障政策を統合した戦略的な意味合いを持っています。中でも、ACFTA(中国ASEAN自由貿易協定)は中国にとって大きな成果を収めました。しかし、「中国は輸入拡大に向けて十分な措置を講じていない」との批判が多く、中国政府は消費財の輸入関税を一段と引き下げる方針を発表しました。
消費財の輸入関税を12月から引き下げ
中国政府財政省が24日ウェブサイトに掲載した資料によれば、乳児向け粉ミルクをはじめ乳幼児用おむつやブルーチーズ、コーヒーマシン、スキー用品など計187の製品カテゴリーで平均17.3%の関税を12月1日から7.7%に引き下げられます。
中国政府財政部が「国务院关税税则委员会关于调整部分消费品进口关税的通知」(国務院関税委員会の消費財の輸入関税調整に関する通知)を発表しました。
<国务院关税税则委员会关于调整部分消费品进口关税的通知>
税務委員会[2017]25号
税関総局:
2017年12月1日から、一部の消費財の輸入関税は一時的な税率で削減される。 具体的な税金項目と税率の調整は附属書に記載されています。
国務院関税委員会
2017年11月22日
附属書:消費財輸入の暫定税率調整表
http://m.mof.gov.cn/zcfb/201711/P020171123340555922022.pdf
消費財の輸入関税引き下げの狙い
中国は他国の貿易黒字とのバランスを取るために、輸入を増強するための十分な努力をしていないという批判に直面しています。トランプ米大統領は、中国が不公平な貿易慣行に従事しているとし、「米国最大の中国との貿易赤字」を封鎖すると約束していることを訴えており、そして他国からも「中国は輸入拡大に向けて十分な措置を講じていない」との批判を受けてきました。
そこで、輸入を増やせば貿易収支の均衡に役立つため、10月の共産党議会で「世界最大の消費者市場における生活水準の向上」と「より良い品質の製品に対する市民の要求に応える」という名目で“習近平国家主席”の指示があり、鐘山商務相が今月「輸入需要を支えるため国内市場を開放する措置を講じる」との方針を明らかにしていました。
この計画は、中産階級の買い物客が外国ブランドの商品を購入することにより外国の企業が恩恵を受ける一方で、中国の消費者に「海外旅行よりも中国国内での消費」を促す狙いもあるのです。
しかし、表向きは「中国の消費を促進し、開放し続けて中国経済を改革し、世界貿易を進めることに尽力している」と世界に、特に米国に伝えるということでしょうか。
“P&G”や“ネスレ”は恩恵を受けるか?
中国の広範囲の消費財に対する輸入関税を削減する新たな計画は、中国市場における多国籍企業の展望を高めることになります。
しかし、“P&G”や“ネスレ”のように中国消費者に販売する商品の多くは中国で現地生産している企業も多く、中国での輸入はごくわずかな部分しか占めないため、そういった企業に恩恵は無いものと思われます。(※現地生産のための原材料の輸入関税について筆者は詳しくないので、あくまでも推測の話です)
中国越境ECへの影響は?
2016年4月8日から「新越境EC制度」をスタートしましたが、突然の事態に混乱が生じたことで新制度の一部を延期するなどの措置がとられ、全面施行は2018年末まで延期されています。今回の消費財の輸入関税引き下げにより「新越境EC制度」の一部修正なり、何らかの影響はあるのでしょうか。現時点では関連する情報は有りませんが、今後注目していく必要はありそうです。
今まで中国越境ECを見合わせていたものの、これを機会に踏みだす企業も多く出てくるのではないでしょうか。中国越境ECをサポートする企業は忙しくなるかもしれません。
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