大手携帯メーカー共同開発のQuickAppはミニプログラムの成功を揺るがすか?
“共通の利益の前でこそ、本当の敵を見分ける事ができる”この言葉ほど現在の中国国産の主流携帯を語る上で適した言葉はありません。
QuickApp とは
最近開かれた“QuickApp始動”発表会では、世界のスマートフォン市場の7割近いシェアを占める国産携帯メーカー大手が一堂に会し、“モバイルエコシステム”の革新について討論を行いました。
QuickAppとは、中国の大手携帯メーカー9社が共同で打ち出したモバイルアプリケーションの新システムで、このプログラムを直接ハードウェアのOSに組み込む事で、ユーザーは従来のようにいくつものアプリを、インストール・保存・アップデートする必要なく、いろいろなアプリを使用できるようになります。また、QuickAppは微信(WeChat)ミニプログラム(以下、ミニプログラム)の対抗馬としても注目を集めています。
また、この発表会では、事前のβテストのデータから「QuickAppは、アプリアクティブ率が現在よりも20倍、顧客リピート率は2倍、流動的な使用率は5-10倍高い」とのデータが発表され、ネット大手の注目を大いに集めました。さらに、アプリストアを通じて「OSのOTAバージョンアップ等の方式を採用する端末は、年内にも10億台に登るだろう」との予測も公表しました。
では、10億台の端末とは、どれほどの数なのでしょうか?考えてみましょう。以前なら1つのアプリを、各携帯メーカーのアプリストアへ棚上げするのに、どれほどのアダプテーションが必要だったでしょう?ある匿名希望の携帯メーカーの内部関係者は、取材に対し、「AI時代において、携帯メーカーが従来のアプリ配信市場に固執し続けるならば、インターネット関連企業にシェアを奪われるだけでなく、ユーザーへの主導権さえ失いかねない事態に陥る」と、答えています。
“58万個のミニプログラム、1.7億人のアクティブユーザー、100万人の開発者、2300の第三開発プラットホーム(WeChatの2次的開発・運営等を行う)、3.1億人のモバイルゲームリピート率”
微信(WeChat)のこの発表は、华为(HUAWEI)や小米(mi)、さらには世界最大の携帯ハードウェア連盟を震撼させ、たった1年の間に彼等を集結させました。彼等はこの会議の目的を、“ミニプログラムとのベンチマーキング”としていますが、実のところは主流携帯メーカーがAI時代到来の下に集結した“利益の為の妥協”と“イニシアティブの変革”と言えます。
QuickAppが狙うアプリ業界の統一
华为(HUAWEI)の顧客事業責任者である余承东氏は、「次世代型携帯がアプリからAI時代に向かう時、世間はハードウェア連盟に関する提携がひっそりと姿を消している事に気づかないであろう」と、予見しています。
一年前、主流携帯メーカーの有力者達は、「AI搭載型携帯が未来社会の趨勢になるだろう」とのコンセンサスにたどり着きました。理想とするのは、AI技術が顧客の習慣的な行動を基に、自ら学習し、自己を最適化する技術であり、AIが顧客の状況を感知し、その次の行動を予測してAIがリソースの割り振りを行います。もっと直感的に言えば、AIが携帯の中で活用されると、次第に携帯が主導して利用者を観察し、理解し始める。ただの道具でしかなかった携帯が、未来では利用者のもう1つの脳となり、ただのハードウェアに留まらない働きをするようになるでしょう。
しかし現在の現状はというと、依然それぞれのアプリは分裂状態にあります。例えば、消費者が「大众点评dianping.com」(レストラン等のレビューサービスを提供するアプリ)でレストランを探したとします。すると、「大众点评」のアプリを開いた後、更に「高德地图amap.com」(地図アプリ)のアプリを開いてレストランの場所を探さなければなりません。つまり、2つのアプリ間には相互性がないのです。
先に述べた携帯メーカーの内部関係者は、記者の取材に対し、「もし携帯メーカーが、ユーザーの習慣を基礎とした完璧な生活シーンを手に入れたいなら、相互性を持つアプリ“ブリッジ”を携帯に搭載する必要がある。これがQuickAppの初心である」と述べています。
しかし、 アプリ配信システムの再構築というのは決して簡単ではありません。携帯メーカーは、アプリ配信者の改革だけでなく、自身の改革も行わなければならないからです。
モバイルネット時代、 アプリ配信は開発者とユーザーの間で優位な地位を確立しており、ネット大手は以前からこれを要所として死守してきました。そして、ここ数年の合併分離を経て、現在はApple iOSに基づくiPhone版アプリが一部を割拠する以外に、Android版のアプリ配信市場での戦局も比較的安泰していると言えます。Google PlayはAndroidOSの中で首位を占め、中国市場では腾讯応用宝(TencentAndroidStore)、360(360.cn)、百度(Baidu)、阿里(アリババ)など、インターネット企業もアプリ配信システムに参入し、スマートフォンメーカ―と横断的な繋がりを持つ事で、市場の大部分のシェアを占めるようになりました。
この他に、主流携帯メーカーのアプリストアでは、携帯電話の出荷量とインストール件数の増加に伴い、アプリ配信がキャッシュ・カウ事業になっています。 というのも、共同開発型のアプリでは、携帯メーカーは一種類のアプリにつき、一台2元-5元の利益を得ることができます。つまり、1つの型式の出荷量が1000万に達する携帯電話では、仮に一台の携帯に15種のプリインストールアプリを搭載し、顧客がその全てのアプリを使ったとしたら携帯メーカーの売り上げは億にも登るからです。
しかしやはり、目下のQuickAppの発展をみると、主流携帯メーカー各社はそれぞれが独自の解決案を見出してはいますが、“QuickApp”の発展に対する熱意も十分に見てとれます。
ミニプログラムとの腕相撲
QuickAppの発表会で、各携帯メーカーは皆、「2018年QuickAppが搭載される端末は10億台に登る」と宣言し、さらに、事前のβテストのデータから、QuickAppの“ワンクリックですぐ使える”という機能によってQuickAppは、今よりアプリアクティブ率が20倍、顧客のリピート率は2倍、流動的な使用率も5〜10倍に高まると言うデータを公表しました。
産業オブザーバー洪仕斌氏は、QuickAppとミニプログラムの違いについて、「QuickAppとミニプログラムのロジックは、ユーザーがアプリをインストールする手間を省くという点では全く同じである。しかし、QuickAppを推す携帯メーカーにとっては、ユーザーがアプリを利用する為の入り口の主導権を再び取り戻さなければならない。という点で異なり、この事が双方の競争関係を露呈させている。」と、自身の考えを述べています。
微信(WeChat)の創始者である张小龙氏は、2017年7月の時点で、「ミニプログラムは、今後2年間の内にアプリ市場の80%のシェアを占める事になるだろう」と予測していました。そして、今年初めに公開された微信(WeChat)OpenclassPRO版(微信公开课PRO)のデータによれば、2018年1月15日時点で、ミニプログラムのデイリーユーザー数は1.7億人に達しています。
今後直面するQuickAppの猛攻に対して、微信(WeChat)グループは今年の3月21日、第一財経の取材に「私達は、ミニプログラムの“すぐに使えて、すぐ手離せる”という理念が業界のコンセンサスになった事をとても歓迎しています。また皆様と共に、この様な新たなユーザーサービス形態をより良いものにしていきたいと願っています。現在、私達も一部のAndroid携帯メーカーと共同し、ミニプログラムのフレームワークを直接AndroidOSに備え付けることで、ミニプログラムとAndroid携帯メーカーのより良い連携を後押しする試みを行っています。」と、回答しました。しかしこの時、微信(WeChat)側は、どのAndroid携帯メーカーがパートナーなのかについては、具体的な明言を避けました。
また、微信(WeChat)は記者に、「私達は引き続き、ユーザー数とソーシャルネットワークでの優位性を発揮し、技術公開と敷居の低さを武器に、パートナーと共同してミニプログラムの各業界での普及を促進していきます。」とコメントしました。
HTML5産業の専門家であり、DCloudのCEOでもある王安氏は、携帯メーカーとネット企業の今後の競争について、「モバイルインターネットの最初の入り口は、携帯メーカー側にある。もし、機能もサービスも同じならば、入り口が先にある方が優位だろう。だが、もしハードウェアメーカーが、ユーザーにとっての最初の窓口であると言う地位利用し、腾讯応用宝(TencentAndroidStore)、百度(BaiduAppstore)、360助手(sj.360.cn)を含むソフトウェア会社から利益を得ようとするならば、ハードウェアメーカーは各社が増産に励む事で、それぞれの販売台数は伸び悩み、結局はソフトウェア会社から得る利益を皆で分け合わざる負えない状況になるだろう」と述べました。また、「微信(WeChat)は、独自のソーシャルネットワークや、それ以外の実生活で使われる微信支付(WeChatPay)や微信広告(WeChatAd)という独自の機能を持ち合わせており、自己の利益やシェアを守れるが、その他のソフトウェア会社は事業に厚みが足りず、ハードウェアメーカーに利益を奪われるのは避けられないだろう」と話しました。
さらに王安氏は、「ミニプログラムには、多くの特色ある機能やサービスがあるが、やはりソーシャルネットワーキングを主としたアプリに他ならず、多くの便利な入り口では、いずれもミニプログラムが使えない。但し、携帯メーカーはアプリショップ、ブラウザ、サーチ、カード式ショートメッセージなどの多くのシーンで、アプリサービスの入り口を開く事が出来る。目下、QuickAppの完成度はまだまだミニプログラムには追いついていないが、必ずやミニプログラムを、特定の分野にとどめるようになるだろう」との認識も示しました。
いずれにせよ、携帯メーカーと騰訊(Tencent:WeChatの親会社)を含むネット大手の間の対立はこの先も続き、今後のAndroidモバイルエコシステムの未来に深刻な影響を及ぼすでしょう。
[原文 : http://www.opp2.com/76276.html]
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