対中国市場“ネガティブな欧米企業”と“ポジティブな日本企業”
「中国熱が冷めてきた欧米、日本はブーム復活の兆し」と言う記事を目にしました。それによると、「中国ビジネスに対する見方が米国企業はネガティブへ、日本企業はポジティブへと向かっている」というものでした。
中国熱が冷めてきた欧米と日本はブーム復活の兆し
最近、中国市場に対する米国企業の見方が以前に比べてネガティブ(慎重、消極的)になってきているという話と、それとは逆に、日本企業は中国ビジネスの業績好転を背景に、それまで数年間続いていた対中投資に対する慎重姿勢を修正して積極化に転じる動きが少しずつ広がり始めているという話があります。
日米の企業の間でどうしてこんな違いが生じているのでしょうか、記事の詳細を確認すると、先の「米国企業がネガティブ」というのは、米国における反中感情を背景に「中国悲観論を強調する米国内の組織幹部の発言」が米国の多くの中国専門家の間で評判になったものだとのことですが、はたしてその真実はどうなのでしょうか。
米国の「中国悲観論」
では、その米国の「中国悲観論」とはどの様なものでしょうか。先ず第1には「知的財産権の侵害」、第2に「中国政府の突然の政策変更によるビジネスへのダメージ」、第3に「資金回収難」と3点の指摘が挙げられていますが、確かに日本目線で視ても肯けるものです。
しかし、海外市場への進出にリスクは付きもので、日本企業も慎重な姿勢をとる時期もありましたが、そのリスクを如何に掻い潜ってマーケティング戦略を打ち出すかが勝負とも言えます。ところが、近年の中国は海外企業にとっては回避できぬ政策を打ち出しており、それによって「中国悲観論」がクローズアップされた訳です。
業種による経済格差
中国国内では、米国企業でも自動車、製薬、ヘルスケアなどの分野は今も好調を維持していますが、それに対してIT関連企業は中国政府による様々な規制強化により苦汁を飲まされている現状があります。
さらには、最近、中国の地元企業が日用品の分野で品質を向上させて、従来米国企業が優位に立っていた分野を中国企業が台頭してシェアを奪い始めているという分析結果もあり、このように業種によってバラツキはあるものの、米国企業にとって中国市場のビジネス環境は全体として徐々に厳しくなっている傾向にあり、これに加えて、知的財産権の侵害が是正されないことがネガティブ傾向に拍車をかける一因にもなっているのです。
欧州の見方
一方、欧州企業の中国市場への取り組み姿勢はどうでしょうか。やはりここ数年の中国への警戒の高まりが指摘されています。
「中国企業による相次ぐ欧州企業の買収」「AIの発展に伴う中国企業のデータ収集力」「スマホ、Eコマース、フィンテック分野のイノベーション力」といったことが注目され、ドイツ経済界では中国企業に対する警戒感が強まっており、対中投資に対する積極性が以前に比べて後退しているとのことです。
このように、中国市場をよく理解(研究)している米国や欧州の企業は、それぞれ要因は異なりますが、以前に比べて中国ビジネス・中国企業に対する見方が消極的または警戒的な方向に傾いてきていることが分かります。
日本の動向
前述のような欧米企業の中国市場に対する見方の変化に相反して、日本企業は中国ビジネスへの取り組みを積極化させています。
その根拠としては、尖閣諸島問題によって反日感情が強まりましたが、その後日本政府による追求が消極的であることもあり反日感情が払拭されつつあって、また中国の中間所得層の拡大によって日本企業に対する需要が拡大して、売り上げも好調を維持していることが挙げられます。
また、訪日中国人旅行客の増加に伴い、中国人の消費需要の増大を真に受けて、多くの日本企業が「大きなビジネスチャンス到来」と認識しはじめており、中国ビジネスの拡大に消極的だった企業も見方を修正して、中国市場での新たなビジネス展開を積極的に考えるようになっているものと思われます。
チャンスとリスクの捉え方
以上、現在の中国市場の捉え方には欧米と日本で大きな違いがあります。欧米企業にとっては
現在の中国市場はビジネスチャンスよりもリスクが大きいと捉え、日本企業はリスク以上にビジネスチャンスに目が向いていると言えそうです。これが欧米企業と日本企業の中国ビジネス観が逆方向に向かっている現状なのです。
多くの日本企業のマーケティング力は欧米企業のそれに見劣りする面もありますが、それ故に、中国市場の需要自体が中間所得層で拡大しているおかげで、日本企業の得意な製品やサービスに対するニーズも増えてきている今、「中国人が求めているものを持っているのは日本企業だ」というポジティブ思考が働いているのでしょうか。
現状においては今のところ、欧米企業の中国ビジネスに対する見方が変化する要因は見当たらず、一方で、日本企業のポジティブな見方はしばらく継続する可能性は高いものと思われます。しかし、中国の政策は予測不能で突然変化する側面もあり、日本企業は欧米企業のリスク管理を研究(分析・吸収)する必要もありそうです。
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