天猫(T-mall)・11月11日「独身の日」を徹底解説
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ユニクロ売切御免!天猫ユーザー、実店舗へも
中国では11月11日の「独身の日」、多くの天猫(T-mall)ユーザーが午前0時になるのを待ち構えていたのでしょうか。11月11日0時を回ると同時に天猫のブランドショップの商品が飛ぶように売れていきました。天猫の売上げは、「独身の日」セール開始からわずか20秒で1億元(約15億円)に達し、6分58秒で100億元を突破、24時間では1207億元(約1兆8600億円)と前年に比べ3割増の過去最高となりました。日本企業ではユニクロが店舗別売上げで6位にランクイン。ユニクロはセール開始直後1位でしたが、在庫切れのため、午前中に完売し、天猫の店舗と同様の割引を行っていた実店舗に足を運ぶ天猫ユーザーが続出しました。
天猫とはアリババグループが中国で運営するBtoC(企業と消費者の取引)サイトで年間アクティブユーザーは4.4億人(2016年11月時点)、中国での流通総額は3兆元(約50兆円、2016年3月時点)。11月11日「独身の日」はダブル11「双11」とも呼ばれ、彼氏・彼女のいない単身・独身者のための記念日です。天猫が自分へのプレゼント企画として2009年から開始しました。日用品、アパレル、車に至るまで半額など大幅な割引価格で販売され、毎年桁外れの売上げを記録しています。天猫に出店する世界の有名ブランドが競って割引やプレゼント企画などキャンペーンを展開しており、年々その規模は拡大しています。
ケンタッキー、スタバ 実店舗へ誘導
今年のダブル11の注目すべき点は、天猫ユーザーがECサイトというインターネットの世界を飛び出し、実店舗に足を運んだことでしょう。ユニクロは売り切れにより午前中で天猫の店舗を閉店しましたが、天猫で商品を購入できなかったユーザーが北京や上海の実店舗に足を運び、長蛇の行列ができました。また、今年の特徴は飲食チェーンの参戦が顕著だったことも挙げられます。ケンタッキー・フライドチキンがダブル11限定のクーポンを発行し、スターバックスが限定ドリンクを用意するなど、天猫の店舗と実店舗が連動した取り組みが多くみられました。
購入から配送まで13分19秒で完了
天猫の店舗と実店舗の連動は販売だけではありません。大手アパレルメーカーなどは、天猫の店舗と実店舗の物流システムを連動させることで、天猫での購入者の近隣店舗に配送し、購入から数時間で届ける取り組みも行われました。天猫は、購入、決済から梱包、そして広東省の購入者への配送完了まで13分19秒で行った記録をアピールするなど、迅速な物流システムが構築できていることを強調しました。出店企業は、価格の安さやブランド力だけでなく、配送のスピードについても競い合っていたようです。
化粧・スキンケア品を女性に提案 マツキヨ、イオン
ユニクロ以外の日本企業はダブル11に向けてどういった取り組みを行っていたのでしょうか。主な取り組みを見ていきたいと思います。ドラッグストア大手のマツモトキヨシは、和服を着た女性の写真をページに起用し、日本の商品を全面的にアピールしました。特に力を入れたのは高品質な化粧品やスキンケア用品で、プレゼントキャンペーンでは、日本への航空券や上海ディズニーランドのチケットを用意しました。イオンも、中国で人気の高い日本製の化粧品、スキンケア用品のほか、足のむくみの解消に役立つ「足リラシート」を紹介するなど女性客を意識したラインナップをPRするとともに、割引や割引券のキャンペーンを展開しました。花王は、赤ちゃん向けのオムツ「メリーズ」を全面に押し出し、サイトにアクセスすると割引券がもらえるキャンペーンを行いました。各出店企業は、ただやみくもにさまざまな商品を売り込むのではなく、ターゲットや売り込みたい商品を明確にしたピンポイントの販売で他の店舗との差別化を図っていたようです。
カーニバル、お年玉、Weiboなどで「ダブル11」PR
日本企業が天猫のダブル11のキャンペーンに参加する最大のメリットといってよいのは、そのプロモーション効果でしょう。11月10日に行った2016天猫ダブル11カーニバルでは、アリババグループ創業者のジャック・マー会長をはじめアメリカの女優、スカーレット・ヨハンソンさんなど中国国内外から多数の著名人が集まり、ステージで観客の目を楽しませたほか、カーニバルのようすを動画配信しました。また、時間帯ごとに紅包(お年玉)が配布し、ダブル11の終盤にも盛り上がる場を作るなど、キャンペーン期間全体を通じて天猫ユーザーを楽しませる工夫があったことも売上げ増に影響したようです。中国版Twitterといわれ、約6億人のユーザーがいるといわれているWeibo(微博)と連携したプロモーションやキャンペーンを展開したことも売上げ拡大に大きく貢献しています。中には、ダブル11での利益を度外視し、中国の人々の自社への認知度を高めることを目的としている企業もあり、ECサイトでの販売のほか、実店舗の中国進出の足がかりにしたい狙いもあるようです。
ダブル11に続け!ダブル12、ブラックフライデー
天猫でのダブル11の成功を受けて、淘宝(タオバオ)でも2012年から12月12日にダブル12「双12」を開催しています。淘宝とはアリババグループの運営するCtoC(消費者間の取引)サイトです。また、アメリカでは、11月の第4木曜日(感謝祭)の翌日にあたる金曜日にクリスマスセールが始まることから、11月第4金曜日を「ブラックフライデー」と呼んでいます。Amazonなど国際的なECサイトが「ブラックフライデー」セールを行うなど世界的に「ブラックフライデー」が波及する中、天猫など中国のECサイトでもキャンペーンを行う出店企業が登場しており、ダブル11に続く販促のチャンスを伺っています。
実店舗の中国人客を天猫の店舗へ 三越伊勢丹
今年のダブル11では、天猫の店舗から実店舗に消費者を誘導する動きが数多く見られましたが、実店舗から天猫の店舗へ消費者を誘導するケースもあります。三越伊勢丹は、11月25日から天猫国際(Tmall Global)で開催されるキャンペーン「ブラックフライデー」に合わせて越境ECに本格参入しました。三越伊勢丹グループ店舗の免税売上高は中国人観光客を中心に伸びています。継続的な販売や中国での新規顧客開拓を視野に入れ、三越伊勢丹の独自商品を中心としたファッション衣料、雑貨、化粧品、食品、リビング用品などの販売を行い、随時取り扱い品目を拡大していく方針です。天猫国際にはすでに資生堂やライオンなどのメーカーのほか、イオン、コーナン商事など日本の流通小売大手も多数出店しており、そこに百貨店である三越伊勢丹が加わることで、中国での日本企業間の競争が一層加熱しそうです。
実店舗にも強い影響力 アリババのECサービス
日本企業をはじめ世界中のメーカーや小売店が天猫を中心とする中国のECサイトに集う最大の理由は、中国というマーケットの大きさでしょう。主に中国のECサイトを運営するアリババグループの流通総額は、アメリカのウォールマートをを上回る世界一で、ダブル11での天猫での総売上額は、毎年更新され、ギネスにも認定されるほどその額は大きくなっています。中国のインターネット人口は約7億人といわれていますが、モバイルユーザーを中心としたインターネットユーザーは年々増えており、さらなる拡大が見込まれます。インターネット上の店舗から実店舗へ、実店舗からインターネット上の店舗へ、といった中国の消費者の流れができつつある中、今後、中国の消費者を取り込むためにはインターネット上の店舗と実店舗をうまく連動させた取り組みが必要であるといえるのではないでしょうか。