天猫(T-mall)2017年出店新ルール発表
技術サポート料のルール変更
2017年1月1日から天猫(T-mall)の出店ルールが変更されました。大きな変更点の一つ目は技術サポート料に関するルールで、これは食品、薬品器械、化粧品を取り扱うショップに適用されます。これまでのルールではショップに対する評価ポイントが4.6以上で、年間売上額が一定の条件を満たした場合に、技術サポート料の返金を受けられたのですが、新しいルールでは、「ショップに対する評価ポイントが4.6以下である」か「ルールの違反や詐称によって処分された」か「架空取引や他人の権利侵害のような一般的なルール違反によって12ポイント以上の減点が2回以上あった場合」のいずれか一項目にでも該当すると、翌年は技術サポート料の割引きが受けられなくなります。
ショップの名称のルール変更
二つ目の大きな変更点はショップの名称に関するルールです。複数のブランド(商標)を所有する旗艦店(フラッグシップショップ)は、取り扱う複数のブランドの中から一つだけ選んで「ブランド名+(カテゴリー)+旗艦店」をショップ名とすることが新たに規定されました。また、商標使用権の授権を受けて出店する旗艦店(フラッグシップショップ)の商標使用許諾契約に商品範囲の制限がある場合、またはその商標には複数のプロダクトラインが存在するが出店者はそのうちの一つのプロダクトラインの商品のみを取り扱うことが認められている場合には、新たな規定によれば、ショップの名称中に必ずそのカテゴリーを示さなければなりません。そして、そのカテゴリーの分類もこれまでよりも細分化されています。
消費者目線に立ったルール改正?
今回の出店ルールの変更・追加はいずれも消費者目線に立った措置であると言えるでしょう。天猫(T-mall)の消費者の商品への信頼性やショップの対応に対する不満まだまだ存在し、その対策が求められていました。評価の低いショップを篩いに掛け、架空取引などの不正行為に対するペナルティをより明確にすることや、ブランドの扱いをより厳格にすることで消費者のショップに対する信頼を回復する狙いです。例えば日本でもよく知られる上海蟹は現地では「大閘蟹」と呼ばれていて上海郊外の陽澄湖産のものが最高級とされているのですが、陽澄湖産ではないのに陽澄湖産であると見せかける産地偽装が横行し大きな問題となりました。そのためか、細かい部分の改定なのですが、2017年のルール改正では、大閘蟹を取り扱うショップに対してこれまで以上に厳格に生産者や生産地の証明を求める規定になっています。また、ショップの名称に関するルールの改正も、消費者の視点から見てそのショップがどのようなブランドを取り扱うのかがより明確になります。
タテマエとしてのルール変更
中国のECではプラットホーム間の競争がますます激化してきています。今後はいかにして多くの消費者を出店者にもたらすかがECマーケティングの本質となるということが言われています。それを実現するために天猫(T-mall)が2017年に目指す取り組みの具体的な方向性として示されているのが、「ブランドとより多くの新しい消費者を結びつけること」、「個人ではなくコミュニティにターゲットを合わせること」、そして「オムニチャネルによるよりオンラインと実店舗との有機的な融合を果たすこと」だとされています。オフラインとオンラインと物流機能とを有機的に結合させて「新しいリテール」を実現させるということも取りざたされています。今回の出店ルールの改訂は額面どおりの受け取り方では、消費者の出店者に対する信頼度の向上を目指したものと言えるでしょう。
天猫(T-mall)のホンネ?
天猫(T-mall)が継続的に発展をしていくためには大量の消費者が必要です。大量の消費者をどこに求めるかというと、一般的に言われているのは潜在的なユーザーが多く存在し、ECの未開地である中国の内陸部や、北京や上海、広州などの大都市周辺の中小都市、そして農村です。そして更に即効性のある大量の諸費者を確保する手段が、既に大量の顧客を持つ実店舗に天猫(T-mall)に出店してもらうことなのです。出店のハードルを上げることで、弱小の出店者は自然にフィルターにかけられ、おのずと優良なブランドの出店者の占める割合が増えます。中小の出店者が少なければ大型出店者にとっては中小の出店者との無用の競争が避けられるので、出店しやすい環境になるでしょう。出店のハードルが上がることで、天猫(T-mall)に出店していることが一種のステイタスにもなります。量から質への転換を図る天猫(T-mall)にとって今後必要なのは、中小の有象無象の何をやらかすかわからない出店者ではなく、有力なブランドと良質の顧客とを持つ信用の置ける大型の優良出店者なのでしょう。オンラインと実店舗の有機的な融合というと聞こえはいいのですが、視点を変えれば手っ取り早く一定の消費者を有する実店舗を天猫(T-mall)のプラットホームに誘引する戦略であるとも解釈できます。ライバルであるプラットホームの京東(CD.com)はよく一軒の大きなスーパーマーケットに例えられ、一方の天猫(T-mall)はテナントの集合体であるショッピングセンターに例えられます。京東(CD.com)では自前の物流体制を備えサービスも統一管理されているの対し、天猫(T-mall)では出店者に配送もサービスも任されています。京東(CD.com)ならば偽物や粗悪な商品の可能性はほぼないが、天猫(T-mall)では旗艦店(フラッグシップショップ)以外だと買ってみないと判らない・・・というようなこともしばしば囁かれています。この課題を克服し、大型で優良ブランドを取り込むことで京東(CD.com)の攻勢に対抗し、中国ECでの影響力を確保したいというのが、天猫(T-mall)のホンネなのではないでしょうか。これまではとにかく出店者を集めれば消費者が増えて売り上げを確保できていたのですが、ここにきて量から質への転換も求められているのです。2017年の中国ECは新しい動きが出てきそうですので、今後も引き続き注目していきたいところです。