急がれる中国決済サービスの導入
中国では偽札などによる現金のリスクが高いために、財布変わりの電子マネーとしてUnionPay(銀聨カード)が君臨して来ました。そしてネットショッピングに対応するためにAlipayが生まれ、また、SNSと連動したWeChatPayが利用されています。中国ではこの3つの電子決済サービスが他を抜きん出て実店舗はもちろんあらゆる場面の決済手段として定着しています。もちろん訪日中国人観光客は日本でも電子決済を優先しており、増加し続けている中国人観光客への対応として日本全国各地での中国決済サービスの導入が急がれます。
中国の三大決済サービス
UnionPay(銀聯) | Alipay(支付宝) | WeChatPay (微信支付) |
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サービス提供元 | 中国銀聯(80以上の金融機関が共同で設立) | アント・フィナンシャル (アリババグループの金融子会社) |
テンセント (騰訊控股) |
サービス開始 | 2002年3月 | 2004年12月 | 2013年8月 |
決済のタイプ | ・デビットカード ・クレジットカード ・プリペイドカード |
モバイル決済サービス (QRコード決済) |
モバイル決済サービス (QRコード決済) |
利用者数 (発行枚数) |
13億人以上 (50億枚以上) |
約8億人 (2016年) | 約6億人 (2016年) |
「銀聯カード」訪日中国人の約9割が利用
中国内陸、香港を中心としたアジア地域で圧倒的なシェアを持つUnionPay(銀聯)カードは、カード発行枚数が50億枚にも達しており、カード発行枚数と取扱高において世界一となりました。日本を訪れる中国人観光客のほとんどがUnionPay(銀聯)カードを持っており、滞在中の買い物に利用しています。UnionPay International(銀聯国際)が訪日中国人客の日本でのクレジットカード利用実態について「訪日中国人観光客のクレジットカード利用実態調査」を実施しましたが、訪日中国人観光客300名を対象としたこの調査では、約9割の訪日中国人観光客が旅行中にクレジットカードを利用しており、そのうち半数近くが現金よりクレジットカードをメインに使用していることがわかりました。また、旅行中クレジットカードを使った場所として、デパートやドラッグストア、ディスカウントストアなどが多くなっていますが、スーパーやコンビニにおいても使用しており、コンビニエンスストアでのカード利用者の94.8%以上がUnionPay(銀聯)カードを利用しています。 また日本滞在中のクレジットカードと現金の使い分けについては「カードをメインに使い、カードが使えない時に現金を使った」との回答が最も多く、訪日中国人観光客のクレジットカードの利用率が極めて高いことがわかりました。
【調査概要】
調査対象:日本に1回以上旅行をしたことがある中国人観光客
回答数:300(有効回答数から300サンプルを抽出)
男性:160名 女性:140名
20代:99名 30代:120名 40代:52名 50代:25名 60代以上:4名
調査期間:2015年12月4日~10日
調査方法:訪日中国人観光客に対して帰国時に上海市内にてアンケート用紙による調査を実施
Alipay(支付宝) & WeChatPay(微信支付)
昨今、インバウンド決済としてスマートフォンにQRコードを表示させて店舗側が読み取ったり、店舗が提示したQRコードをスマートフォンで読み取ることによって決済できる「Alipay(支付宝)」と「WeChatPay」の導入店舗が徐々に広がっています。
「Alipay(支付宝)」は2004年12月にサービスを開始後、急速な伸びをみせて2013年にモバイル決済サービスの処理額が1500億ドル近くに達し、世界最大規模のモバイル決済を行っています。利用登録者は約8億人にもなり、中国国内で50%のシェアを握っておりその圧倒的な取引量として1日の決済金額は200億元で1日の決済取引数は1億580万件にもなるとされています。
「WeChatPay」は2013年8月からサービスを開始して中国国内で40%近い市場シェアをもっており、利用登録者は約6億人にのぼります。「Alipay(支付宝)」より後発ですが様々な生活シーンに応じた支払い機能が使えるため急激な伸びで「Alipay(支付宝)」に追いつく勢いです。
日本でも両決済サービスは、コンビニエンスストア、百貨店、ディスカウントストア、家電量販店、ホテルなど、多くの店舗に広がっています。たとえば、“リクルートライフスタイル”では、個人店でも無料で導入できるPOSレジアプリ「Airレジ」で「Alipay」に対応した「モバイル決済 for Airレジ」を展開し、また「WeChatPay」は“ネットスターズ”や“アプラス”、“ビリングシステム”、“コイニー”などが加盟店開拓を行っています。
東京都のインバウンド対応支援
東京都においては中国決済サービスの導入に「インバウンド対応力強化支援補助金」が活用できそうです。東京観光財団が「インバウンド対応力強化支援補助金」を公募していますので、中小企業団体・グループにとってはこの補助金が中国決済サービスの導入の一助になるのではないでしょうか。対象事業者は都内の「民間宿泊施設」「飲食店」「免税店(中小企業者のみ)」「外国人旅行者の受入対応に取り組む中小企業団体・グループ」となっており、補助対象に「クレジットカード決済端末や電子マネー等の決済機器の導入」が含まれています。募集期間は「平成29年4月27日(木)から平成30年3月30日(金)まで」なのでこれからの導入にもまだ間に合いそうです。また、地方自治体向けには観光庁の「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金(地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業)」がありましたが残念ながら「クレジットカード決済端末や電子マネー等の決済機器の導入」に該当するものはありませんでした。念の為、地方自治体ごとに確認してみることをお勧めします。
インバウンド需要は全国に広がりを見せており、年々、取扱い金額は増えると思われる中で先行してサービスをスタートした「銀聯カード」は観光客数の多い札幌、東京、大阪、京都、福岡、沖縄で導入が進んで商店街や個人商店にも広っており、加盟店の増加に伴い利用者数も伸びをみせています。一方では「Alipay」や「WeChatPay」も同様の流れで利用が進んでいくものと思われるため、伸びしろのある両決済サービスの導入が急がれます。
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