JD.com(京東商城)のパートナーシップ戦略
中国最大の小売業者であるEC大手“JD.com”が中国最大のインターネット検索プロバイダー“Baidu”と提携して、両社の強力なデータリソース、膨大なユーザーベース、AIアルゴリズム技術を活用して「戦略的パートナーシップ」を開始するといいます。しかし、JD.comのインターネットプレーヤーとの提携はこれだけではありません。
京東商城“JD.com”とは
京東商城(JD.com)はタオバオのアリババグループと並び、中国の2大ECモールと呼ばれている巨大サイトです。「京東商城“360buy.com”」が「京東商城“JD.com”」にブランド名を変更したもので、家電・PC・家具・衣類・食品・書籍などの商品をネット販売しています。京東商城の現CEOである劉強東氏が2004年に「京東多媒体網」を創設してPC機器のネット販売を開始後、2006年には携帯電話や他の家電の販売も開始して、その後取り扱う商品の種類を増やして行き2010年には書籍も取り扱うようになりました。アリババが展開する「Tmall Global」との大きな違いはマーケットプレイスだけでなく直販も展開している点と購入者まで直接届ける物流までをカバーしている点です。基本的には自社販売に力を入れており、日本のアマゾンのような販売方法と言えるでしょう。そして京東全球購(JD Worldwide)は海外企業のB2Cオンラインショッピングサイトで、世界中のブランドを中国の消費者に販売する通販サイトとなっており、その中で2015年には日本製品専門サイト「日本館」もオープンさせています。
Baidu(百度)との提携は通過点か
“JD.com”と“Baidu”の新しいパートナーシップの要となっているのはビッグデータおよびAIアルゴリズムで、広告主がユーザをより良く理解できるよう Baidu がAI技術を利用し、JD.comはその豊富な消費者データを提供する見込みです。このパートナーシップにより、広告主は Baidu のアプリ内でコンテンツパートナーを通してユーザに直接ターゲットを絞ることができ、よりパーソナライズされたEC体験を提供することが可能になるのです。パートナーシップの一部として、Baidu の主力モバイル検索アプリにおいて、中国国内の数億人におよぶモバイルユーザと彼らが必要とするサービスを直接結びつけるJD.comのアクセスポイントが提供されます。サービスは Baidu のコアとなる検索プラットフォームやマッピング、音楽、動画などのサービス群から、人気のあるチャットルームプラットフォームBaidu PostBar(Tieba)まで多岐に渡っており、このアクセスポイントによってユーザはJD.comの商品を Baidu のアプリを離れることなく購入することができるのです。この“Baidu”とのパートナーシップはJD.comの膨大なデータがAIのディープラーニングに貢献し、JD.comにとってもマーケティングの拡大に貢献するため、お互いに「win-win」の関係であることは間違いありません。
Nielsenとのデータ協力
JD.comは、主要なインターネットプレーヤーのアプリにECを統合する最前線に立っています。 TencentのWeChatのエントリーポイントは、モバイルチャットとECを組み合わせるための世界的な業界標準であることが証明されています。その協力が始まって以来、JD.comは、ブランドの精密なマーケティングソリューションを提供するために、多くの主要な中国のインターネットプレーヤーとの提携を開始したのです。そして、JD.comは世界最大の情報・調査会社“Nielsen”と戦略的協業契約およびデータ共有の取り決めに署名しています。両社はこの提携のもとにマーケティング施策に対する消費者のリアクションを計測するマルチタッチアトリビューション(MTA)というビッグデータ製品のローンチを計画しているのです。基本的に、JD.comの買い物客の実際のデータを活用することで、顧客の購入への移動経路を追跡することにより消費者にとって本当に重要なことが分かります。Nielsenのプロフェッショナル向けデジタルメディア監視サービスは、JD.comの内部および外部のメディアプラットフォーム全体にわたるマーケティング投資による広告への影響と最終的な販売効果を計算するために、JD.comの2億3,650万人のアクティブユーザーとそのクラウドプラットフォームを活用できるのです。NielsenのVishal氏は「ECが広告プラットフォームとして進化するにつれて、私たちはコラボレーションをさらに進めることができたと思ったので、パートナーシップを拡大しました」と語り、JD GroupのJing Weiping副社長は、「この協力の下で、大規模なデータ分析を活用して、メーカーがデジタルマーケティングへの効果的な投資に集中し、確実な一歩を踏み出すことを支援する」と語っています。JD.comとNielsenの協力関係もまた「win-win」と表現することができます。
高級ファッションEC“Farfetch”とも提携
JD.com は Farfetch(ファーフェッチ)とマーケティング、配送サービス、ITソリューションなどで連携するといいます。 Farfetch との戦略的な業務提携は、JD.comの比類ない配送ネットワーク、ネット金融、テクノロジー技術、WeChatとのパートナーシップを含むソーシャルメディアのリソースと、Farfetchのラグジュアリーファッション界における統率力とを融合し、シームレスなショッピング体験を実現するもので、提携により統合された両者の強みは、Farfetchと提携する700に及ぶブランドやセレクトショップにとっても有益で、莫大なリソースを活用して魅力的な中国マーケットへ新たに参入することができるというメリットがあるのです。JD.comは、富裕な顧客層で高まる需要に応えるべく、ハイエンドのラグジュアリーファッション領域にも焦点を充てており、JD.comの創設者でありCEOの劉強東氏は、「中国のECの長期的なトレンドは、価格競争よりもクオリティの高さにある」「Farfetchとの提携は中国の未来の富裕顧客層の獲得を今以上に強化してくれると思う」と語っています。
京東商城(JD.com)の特徴
JD.comwiをアリババのTmallと比較して異なっているポイントを中心にその特徴を上げて見ます。
・きめ細やかなサービスが実現する中国最大のオンライン直営店。
・商品のクオリティに徹底してこだわり偽物・不良品を徹底排除。
・自社の物流網を構築してスピーディな配送。
・コンビニで商品受け取りができ、1時間以内の受け取りも可能
・商品購入後のアフターケアが非常に充実。
そして最大の特徴が「 多くのインターネットプレーヤーとの戦略的提携」です。
JD.comのビジネスモデルは、検索によるマーケティングやその他広告提供を主な収益源としているTaobao(淘宝)やTmall(天猫)とは異なっており、中国における直接的な競合はDangdang.com(当当)、Amazon China(亜馬遜)、Yihaodian(一号店)でしたが、YihaodianはすでにJD.comが買収済みでありJD.comの勢いは止まりません。
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