世界最大の貨物航空会社フェデックスの中国戦略
1月8日、世界最大の国際総合航空貨物輸送会社フェデックスが中国・上海の浦東空港に大規模な物流ハブ施設をオープンしました。
世界最大の航空会社フェデックス・エクスプレス
フェデックス・エクスプレス(以前はフェデラル・エクスプレス)はアメリカのテネシー州メンフィスを拠点にする貨物航空会社で、フェデックス・コーポレーションの貨物航空部門子会社として、フェデックス・ブランドの下で貨物航空機の運行を担当しており、貨物輸送トン数で世界最大の航空会社です。
1日あたりの平均輸送量は小包400万個以上、貨物1100万ポンド(約4990トン)以上に及び、220以上の国と地域、375の空港を結び貨物機を運行しています。また、保有機材数の面でも、セスナなどの小型機からボーイング777といった大型機まで、合計600機以上の航空機を有しており、保有機材数は貨物航空会社としては世界最大で、旅客航空会社を含めた場合でも有数の規模を誇っています。ちなみに日本においては、15の営業所と集荷センター8箇所を構えています。
中国におけるフェデックス
現在フェデックス・エクスプレス社はどの航空連合にも属さない独立系の会社として運行しています。中国での事業開始は1984年で、2004年上海に中国本社を新設し、2006年には「2006 Most Influential Multinationals in China(中国で最も影響力のある多国籍企業)」に選出された企業のひとつでもあり、2011年には上海に中国最大の営業所を開設しました。
昨年は6月にサイバー攻撃による被害を受けてシステム不調で大規模な集荷・配送の遅れが発生したことと、8月下旬に米テキサス州に上陸したハリケーン「ハービー」が直撃してヒューストンの空港が閉鎖されたことが業績の足かせとなりましたが、この度の、上海浦東空港の大規模な物流ハブ施設オープンには影響するほどのことではありませんでした。
フェデックスの狙い
フェデックスは既に広州にアジア太平洋地区ハブを設置しておりましたが、この上海国際エクスプレス・カーゴハブの新設は、2012年10月に上海空港集団有限公司(SAA)との合意で2017年初頭の完成を目指して進めてきたもので、すでに2012年には中国の国際貿易拡大を見越した戦略的な狙いがあったのです。
新設した物流ハブ施設の敷地面積は13万4,000平方メートルで、将来的な規模拡張にも20年以上にわたって対応できるもので、主に欧米間の輸送拠点となります。およそ1億ドルを投じた施設はコンピュータ制御された全自動仕分けシステムが搭載されており、1時間に最大3万6,000もの荷物や書類を処理することが可能で、さらには、中国税関と出入境検験検疫局(CIQ)のための専用エリアが設けられているため、業務の簡素化と通関プロセスの改善も実現できます。
そして、もう一つの狙いとしては、ネット通販大国の中国において、ネット通販、越境ECに伴って増える国際貨物の需要を確実に手中に収めることなのです。
フェデックス・エクスプレスのアジア太平洋地域のカレン・M・レディントン社長は「中国東部の経済成長を後押しする上で、フェデックス上海ハブのオープンは新たな節目となる。フェデックスが継続するサービスと施設能力の向上により、顧客は急速に変化し続けるビジネス環境においても優位性を保つことができる」と話しており、中国ビジネスにおける戦略的価値としても注目されそうです。
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