中国人のSNSが発信する口コミの影響力
中国人が最も信用する情報源はSNSの「口コミ」です。日本ではテレビや新聞などのマスメディアの情報を信用しますが、中国ではそうはいかない事情があります。中国国営放送のニュース、新聞・出版物は事前に検閲が入っているため、中国の人たちは、全てが正しい情報とは捉えていません。商品の広告宣伝にも企業の意図が入っており真実とは違っていると考えています。そのため、友人知人など信頼できる人の情報を見て自分で判断しています。
口コミが影響力を持つ背景 中国特有の絆「圏子(チェンツ)」
口コミが重要な影響力を持つ背景として、中国独自の強い絆を持つ人間関係「圏子(チェンツ)という考え方があり、家族に次ぐ濃密な関係を構築しています。これは、学歴や経済力が同等などの基準で築かれた友人知人のグループで、助け合いと競争が共存していて、例えば、誰かが良い家電を買うと他のメンバーに情報をシェアして、みんなでメリットを共有します。
誰かが日本に行ったら、SNSでメンバーに報告して有益な情報を共有し、さらに拡散します。この行動は旅行の準備段階から始まり、旅行中にはSNSで情報を収集し発信もします。帰国したら日本での体験や購入した商品を共有し、SNSに口コミ情報が蓄積されます。この蓄積された情報が他の人に検索されるというサイクルが中国人旅行者間で成立しています。一般的な中国人は複数の圏子に所属しています。
口コミが影響力を持つ背景 影響力が絶大な「KOL」とは
KOL( Key Opinion Leader)とは、ネット上で多くのファンに支持されていて影響力が大きいブロガーのことで中国で最大級のSNS「Weibo(微博)」にKOLは多く存在しています。中国人ユーザーが商品を購入する時の判断基準は、口コミを最重要視します。前述のように企業が発信した情報は信用していません。SNSに発信している商品の口コミがユーザーの消費行動に大きな影響力を持っています。一般ユーザーの口コミも影響がありますが、KOLが発信した情報は信頼度が高く、影響も大きくなり、消費者の購買意欲に強力に働きかけることができます。また、健康食品や化粧品などは中国の法律により、広告を出すことが困難なことがあり、商品の知名度を上げるためにはネット上の口コミが重要になります。この場合、KOLから発信された情報が口コミの引き金になり商品の認知拡大につながる可能性もあります。訪日中国人が出発前に入手した情報で有効だったものは、個人のブログが29%で一番多く、以下口コミサイトが14%、SNSが13%と続いています。
日本の商品を中国に向けてPRを行う方法としてもKOLを活用することが、認知度の向上につながり宣伝効果が期待できます。
次に、日本の商品宣伝に中国人の口コミを有効に活用した例を紹介します。
中国人の口コミを活用した事例!新宿伊勢丹
中国人の「口コミ影響力」を最大限に活用した「新宿伊勢丹のPR作戦」を紹介します。伊勢丹は訪日中国人に向けたナチュラル商品の説明会を開催しました。会場にはナチュラル商品に興味がある在日中国人キャリアウーマン30人を招待し、伊勢丹が薦める6商品の説明とお試し会を催しました。
会場はオーガニックカフェで、お茶やスイーツを楽しみながらリラックスして参加者が自由におしゃべりできる雰囲気にしました。
参加したキャリアウーマンたちは「こんな商品があったなんてビックリ!」「友人に紹介したい」など好評でイベントが終了すると彼女たちは、一斉に商品画像やショップの紹介をSNSにアップしました。参加者には2万人以上のフォロワーがいるスーパーKOLもいて、彼女たちの情報は中国全土のユーザーに拡散されたそうです。効果は翌週には現れ、訪日中国人がSNS画像を見ながら商品を探す姿が、伊勢丹のフロアで見られたと言われています。伊勢丹では、新しい形のPRとなる仕組みづくりのスタートができたと満足しています。在日中国人は、日本の本当に良い商品を知っているため、訪日予定者には信頼ができ、憧れの情報発信元になる彼女たちが中国語で発信するSNS情報は、中国本土の人から圧倒的な支持を得ています。
まとめ
訪日中国人が「爆買い」をするきっかけになった要因の一つが、2007年の中国企業による食品問題で、買い物をするなら口コミを参考にしようという考え方が強まって来たからだとも言われています。
その風潮は中国の政治事情を背景に益々強まっているようです。ショッピングの口コミが訪日中国人に大いに役立ってきましたが、コト体験に移行する今、KOLに日本に来てコト体験をしてもらい、圏子のメンバーに情報発信して拡散してもらうことも必要かもしれません。
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