中国国民はロケット打ち上げのたびに怯えている
中国で1月11日に長征3Bロケットが打ち上げられましたが、その一部が山村近くに落下し、大爆発の様子がSNSに投稿されました。
ロケットからのデブリ落下
中国で長征3Bロケットが打ち上げられましたが、ロケットのブースター部分が、四川省西昌市の西700kmほどにある山村付近に落下しました。SNSに投稿された動画を見る限りかなり危険な状況だった模様です。
長征3Bは1月11日に打ち上げられ、高分解能商業リモートセンシング衛星「高景1号」の3~4号基を軌道に送り込んだとされます。しかし、その4つのブースターのうちのひとつが山村付近の山中に落下し、轟音とともに大きな火柱をあげました。
また、今回の打ち上げの2日前に打ち上げた長征2Dロケットからも、「高景一号」を収めていたペイロードフェアリングの一部が、湖北省の畑に落下しています。燃料のないロケット先端部だったため火は出なかったものの、落下地点としては人がいる可能性があるこちらのほうがむしろ危険だったかもしれません。
場所が悪い中国のロケット打ち上げ施設
日本で大型ロケットの打ち上げを行っているのは、種子島東南端の海岸線に面する種子島宇宙センターです。しかし、中国のロケット打ち上げ施設は、冷戦時に核兵器の発射も想定して建設されたため、他国の目につかぬように、海岸線ではなく内陸部の可能な限り国境から離れた場所にあります。そのため、打ち上げるたびにロケットのデブリが施設周辺の市街地付近に落下する危険性があるのです。
日本では近年、北朝鮮のミサイル実験のために「Jアラート」が発報されますが、中国では国が人工衛星を打ち上げるたびに警報も無く何かが落ちてきやしないかと怯えなければなりません。もちろん中国政府も安全性について考えていないわけではなく、新しい長征5号および7号ロケットについては、南シナ海の海南島にある打ち上げ施設を使用して打ち上げるようになっており、ブースターは海に落下するようになっています。
そして、昨年7月2日、最新鋭の大型ロケット長征5号を、海南島にある文昌宇宙センターから打ち上げましたが、打ち上げから約1時間後、新華社通信は、「ロケットの飛行中に問題が起きた」とし、打ち上げが失敗に終わったことを報道しました。(6月19日には西昌衛星発射センターから長征3Bによる放送用衛星の打ち上げを行い、予定されていた軌道への進入に失敗していました)
過去のロケット打ち上げ事故
西昌衛星発射センターからの打ち上げにおいては、1995年1月26日に打ち上げられた長征2E型が打ち上げ直後に爆発し、少なくとも20人が死亡しています。また、1996年2月14日には、インテルサット708を搭載して打ち上げられた長征3B型1号機が打ち上げ直後に機体が傾きだしコントロールを失って、そのまま近くの村に落下し、村が壊滅したとされています。
中国国営新華社通信はその後の報道で死亡者6名、負傷者57名と発表しましたが、当時撮影された墜落現場のyoutubeの映像や目撃証言などから、西側メディアの推測では死亡者は推定200~500人で、史上最大の惨事をもたらしたとされています(中国政府は否定しており、真相は明らかにされておりません)。
2015年8月27日には、中国北部の陝西省旬陽県で人工衛星打ち上げロケットの破片が、ロケット打ち上げから間もなく民家を直撃しましたが幸いにも死傷者は出ませんでした。
中国は西昌衛星発射センターで、1990年以降27年間で15ヶ国32回の打ち上げを代行してきました。また、同センターの打ち上げ成功率は92.6%に達し142日間で9回打ち上げという高密度記録を樹立しているとのことですが、その影には大きな犠牲を伴った歴史があることも無視できません。
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