「電話してくる人とは仕事するな」ならば、Wechatで音声メッセージを送ってくる人とは仕事をするべきか?
目次
「電話してくる人とは仕事をするな」で盛り上がっている日本 中国では?
最近、「電話してくる人とは仕事をするな」というフレーズが話題になり、議論を呼んでいます。もともとこのフレーズは、ホリエモンこと堀江貴文氏の著書『多動力』の「自分の時間を取り戻そう」というテーマの中の一節にあるものです。著者はその中で「電話はゴミ」とまで言い切り、「非同期通信」が手軽に使えるようになっているのに、電話という「同期通信」にこだわり続ける必要があるのか?電話は「自分の時間」を奪う最たるものであって、自分がやりたいことを本当に実現したいのならば「自分の時間」を奪う人間と付き合ってはいけないというのです。日本では「非同期通信」が可能なのに「電話を掛けてくる人」をどう評価するかということで議論が起きていますが、中国でも微信(WeChat)の「音声メッセージを送る人」を巡って議論が起きています。
中国でスマートフォンに話しかけている姿をよく目にするが
微信(WeChat)は8億人以上のアクティブユーザーを抱える、中国で最も普及しているSNSサービスです。中国では、地下鉄の車内やレストランなどでスマートフォンに向かって話しかけ、しばらくすると今度はスマートフォンを耳に当てて音を聞いている人の姿をよく見かけます。これは電話回線を使って通話をしているのではなく、微信(WeChat)に備わる音声メッセージのやり取りしているのです。LINEにも同様の音声でやりとりできる「ボイスメッセージ」機能があるのですが、微信(WeChat)の音声メッセージはそれよりも圧倒的に広く利用されている機能です。
マナーを知らずEQが低い人なの?
日本で盛り上がっている議論の論点から言えば、微信(WeChat)の音声メッセージは電話のように「同期通信」としてもメールやチャットのように「非同期通信」としても使える通信手段なので何も問題は起こらないと思えるのですが、中国ではこの微信(WeChat)の音声メッセージの利用の是非がネット上で議論になっています。この議論のきっかけになったのは、2016年10月に上海で開催された錘子科技(北京)有限公司のスマートホンの新製品発表会での、同社の創業者&最高経営責任者(CEO)である羅永浩氏のプレゼンテーションであったと言われています。このプレゼンテーションで羅永浩氏は、「微信(WeChat)の音声メッセージ送ってくるのはマナーを知らないEQ(心の知能指数)が低い人だと思う」と発言したのです。ただしこれは新製品に搭載された音声入力ソフトの優秀さををPRし、この音声入力ソフトを大いに利用してもらいたいために、あえてこのような過激な表現をしたのであって、微信(WeChat)の音声メッセージの利用者を貶めることは真意ではなかったと言われていますが、「マナーを知らずEQが低い」という部分だけが取り上げられ、果たしてそうなのか?ネット上でも活発に議論されるようになったのです。
音声メッセージの便利さは受信側の犠牲の上に成り立っている
中国のネット上の意見の多くは、音声メッセージの便利さを認めながらも、その便利さを享受できるのは発信側だけであって、それは受信側の犠牲の上に成り立っているというものです。音声メッセージの便利さとして評価できるのは、中国語を入力するという煩雑な作業から解放される点で、これは多くのネットユーザーが認めています。「歩きスマホ」でも、自動車の運転中でも音声メッセージの発信なら危なくないという意見も出されています。微信(WeChat)の開発チームが音声メッセージ機能を追加したのは、中国語入力が出来ない人にも微信(WeChat)が使えるようにというユニバーサルデザインの実現のためだったと言われています。音声メッセージを受け取った側の不便さとして多くの人が指摘しているのが、音声情報の持つ問題点です。文字情報のように飛ばし読みができず、最初から最後まで聞かなければ何を伝えたいのかわからなかったり、場合によっては聞き直さなければならないこともあって、文字を読むよりも時間を浪費してしまうというのです。音声情報では引用したりコピーして転送することができないという指摘もありました。利用するにはまた文字にしなければならない場合もあるというのです。また、微信(WeChat)の音声メッセージには内容を表すような件名がないため、多くの音声メッセージが連続して送信されてきてしまうと、後から必要な情報を探すことが困難だということも指摘されています。さらに、中国の多くのユーザーが仕事中はPC版の微信(WeChat)を使っていて、PC版の微信(WeChat)では音声メッセージを受信したことはPCの画面上ではわかっても、それを聞くにはスマートフォンを取り出さなければならないので、それも面倒だという意見もありました。
「自己中のEQが低い人物」と思われないためには
音声メッセージには人の温もりや感情を伝えられる利点もあるが、それはあくまでも家族や親しい友人間のプライベートな空間で利用すべきであって、それ以外の関係性で音声メッセージを発信することは、メッセージを受け取る側の迷惑を考えない「自己中」な行為と見られても仕方ないという意見が多数派のようです。音声メッセージが使われるシーンとしてイメージされているのは、文字入力が得意でない人であったり、文字を読むのが不自由なお年寄りなどに宛てて発信するなど、なんらかの事情がある場合で、相手のことを思いやって使用するのなら「マナーを知らずEQが低い」とはならないようです。「非同期通信」だから大丈夫だと考えて、安易に微信(WeChat)の音声メッセージで用件を伝えたりすると、「自己中のEQが低い人物」あるいは「自分の時間を奪ってしまう人物」だと思われる可能性があるので注意が必要です。
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