中国企業の日本進出と日本の課題
日本企業の中国巨大市場への進出が続く中、一方で中国企業も続々と日本進出を行っています。8月21日の日本経済新聞電子版では「中国企業、日本に“紅い経済圏”消費分野で進出続々」と報じています、「ネット通販最大手アリババ集団はスマホ決済サービスを提供し、民泊最大手の途家(トゥージア)は楽天と提携した。かつて中国企業の日本進出はブランドや技術を狙った製造業の買収が中心だったが、消費・サービスへと分野が広がってきた。」というものです、そこで中国企業の日本進出事情にスポットを当ててみました。
日中の経済協力情勢
2016年以降、日中関係は全体として改善傾向を維持しています。対話や交流もいっそう密接になって実務的な協力も緩やかに推進されており、両国の国民感情にも回復の兆しがみえています。しかし、現在の日中関係改善の動きはやや脆弱であり両国関係は峠を乗り越えようとする重要な局面にさしかかっているといえます。今年は日中国交正常化45周年にあたり、来年は「日中平和友好条約」締結40周年になります。日中の経済協力は両国関係の重要な安定要素にもなりますし、今の両国経済は異なる段階にあり日中企業の間には相互補完の利点は大きく、今後の相互協力の潜在的メリットはまだまだ多いものと思われます。ここ数年、中国企業の海外進出が加速しており、2016年には「対外投資規模」が「外資導入規模」を上回っています。中国政府は中国企業の日本への投資を支援し、日本経済の好転を期待すると同時に、日本が制度やビジネス習慣の面で海外への市場開放をさらに進め、中国企業の対日投資にプラスになることも願っていると言っています。そうしたここ数年の急速な上昇傾向を目の当たりにし、日本の政府も地方自治体も投資を誘致しようと力を入れているのが実情です。
中国企業“ファーウェイ”が初の日本生産
中国企業による日本進出は2000年代後半ごろから、業績悪化した日本企業の買収という形で増えました。2009年には中国の家電専門店大手がラオックスを買収、本間ゴルフやレナウンなども相次いで中国企業の傘下に入っています。最近は研究開発拠点を設置する動きも広がり、自動車大手の「長城汽車」は2016年に拠点を設けて電気自動車(EV)や自動運転の研究を開始し、「中興通訊(ZTE)」も「あらゆるモノをネットにつなげる」“IoT”の拠点を都内に開設しました。そしてついに通信機器大手のファーウェイ(華為技術)が初の日本生産に乗り出します。年内にも大型工場を新設して通信設備や関連機器を量産するといい、日本の技術と人材を取り込んで日本や他の先進国で受注を増やすとのことです。中国企業が日本に本格的な工場を新設するのは過去に例が無くこれが初めてのことなのです。台湾の市場調査会社「集邦諮詢(Trend Force)」によると、2016年の世界のスマホ出荷台数は13億6,000万台に上り、市場シェアでは、韓国サムソン電子が22.8%で依然世界一で、2位は米Apple社、3位が中国のファーウェイ(華為技術)、4位Oppo(広東欧珀移動通信)、5位Vivo(維沃移動通信)で6位は韓国LG電子でしたが、7位~10位も中国のメーカーが占めたということで、なんとトップ10のうちの7社が中国企業だというのです。そのなかのファーウェイが、千葉県船橋市にあるDMG森精機の工場跡地と建屋を買収し、生産設備を導入して、早ければ年内にも稼働するというのです。当面の投資額は50億円程度とみられ今後も追加投資を検討するとも報じられています。中国にとって日本は人件費の高さが課題でしたが、中国の人件費が上昇したことにより日本の割高感が薄まり、ファーウェイは新工場で生産管理の人材を多く採用する予定だといい、中国流の低コスト大量生産と組み合わせて品質と価格競争力を両立させるとのことです。
中国企業の日本生産での懸念材料
中国では企業の工場から出る環境汚染の問題が深刻化しています。日本は戦後の過渡期を経て水俣病やイタイイタイ病など多くの教訓を得ているからこそ、今の日本の環境保護があります。そうした経緯を経験せずに工場排水を垂れ流して平然としている中国企業が、日本に工場を建設したからといって日本の環境基準を守るかどうかが懸念材料となります。アフリカに進出した中国企業にしても、現地に雇用を生まずに自然環境を破壊するといったルール無視のやりかたが、現地の憎しみを増幅させアフリカ各国で中国人襲撃事件などが頻発しているのです。同様とまで言わぬともそれに近い事が日本で起こらないとは限りません。環境は一度汚染されたら取り戻すのは非常に困難で、日本はそれをよく知っているからこそ、環境をこれほど大切にしてきました。そうした努力を中国企業に踏みにじられぬように日本政府はきっちりと監視・指導を徹底していかなければなりません。
中国を批評する論評より
今の中国に対して厳しい批評をする論評も多々見受けられます、以下はその一部をまとめたものです。
『 中国経済がもはや再起不能だという説は世界の常識になっており、今、世界の注目は中国のヒト・カネ・企業の海外逃亡に集まっています。中国の企業にとって、超経済的政治闘争は興亡の運命を決める最優先課題です。中国企業は、政治力がなければ存続できません。さらに中国企業の根本的な問題は、社会環境と生存条件にあります。中国の大地は、有史以来、伝染病センターとして知られており、ペストなど歴史的な伝染病からSARS(重症急性呼吸器症候群)など現代的なものまで、その種類は豊富です。これを踏まえて考えると、2007年をピークにして中国企業が海外へ逃亡している最大の理由は、環境劣化の問題です。大気汚染、水質汚染、海洋汚染、土壌汚染などの環境問題のほかにも、治安の悪化、社会の乱れが同時進行しています。そのため、若いエンジニアなど能力のある人材は、競って祖国を捨てて海外へと逃亡するのです。こうして、ヒトとカネが国外大脱走するという潮流の中で海外の企業買収は、資本逃避や資金洗浄など企業逃避の別形態となっています。蒋介石や政府の重鎮が海外に持ち逃げした国家の資金は中国には一銭も戻りませんでした。それに危機感を覚えた中国政府は、海外投資を制限するなど、さまざまな手法で資金流出を抑えようとしています。 』
以上はある論評の一部分を要約したものですが、このような論評が幾つも存在するのも事実です。現在のアジア情勢は難しい局面を向えておりますが、そんな中の一員である日本としては友好的な解決が望まれるところです。
日中関係改善の柱として経済協力はとても重要になりますが、前記の“厳しい批評をする論評”は全く無視できない内容でもあり肯ける部分もあります。こうした論評を踏まえた上で友好的な努力を惜しまずに日中がお互いの発展を支えあう関係を築いていかなければならないのですが、はたしてどの様に対処していくかを考えた時には数々の課題が生まれるでしょう。結果的に「懐の探りあい」「キツネとタヌキの化かし合い」になるのではなく、ハッキリとした「give and take」を鮮明にした対話も必要ではないでしょうか。
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