
企業のLinkedin運用のやり方と事例を解説|採用・営業・ブランディングに活かすには
海外営業では、限られた時間と予算で「意思決定者に直接リーチする」ことが不可欠です。その中で、LinkedInは世界9億人以上が利用するプロフェッショナルネットワークとして、営業・採用・ブランディングのすべてに活用できます。特にBtoB分野では、FacebookやX(旧Twitter)の合計よりも277%高いリード獲得効果があるとのデータもあります。
本記事では、LinkedIn活用の3つの目的、効果的な運用方法、実在企業の成功事例を紹介します。
この記事でわかること
- LinkedInを採用・営業・ブランディングで活用する具体的手法
- 成果を出すための企業アカウント運用と改善の実践ステップ
- 実在企業の事例から学ぶ運用施策と数値で見る効果
1.企業のLinkedIn活用法|代表的な3つの目的
企業がLinkedInを活用する目的は、大きく「採用」「営業」「ブランディング」の3つに分けられます。
それぞれの目的に応じた活用法を理解することで、海外市場での成果を効率的に引き出せます。
ここでは、最新データを交えながら3つの目的とその特徴を解説します。
① 採用・リクルーティング
LinkedInは世界9億人以上のプロフェッショナルが利用し、そのうち約5人に1人が同プラットフォーム経由で採用に至っています。
ユーザーの72%が採用担当者であり、求人応募は毎分1.1万件以上という規模と言われています。特に高度人材や海外在住者など、従来の媒体では接触が難しい層にもリーチ可能です。
LinkedIn Recruiterなどの有料機能を使えば、職務・スキル・業界別に精密検索でき、候補者の職歴・スキル評価・推薦文まで確認可能です。採用リードタイムを短縮しつつ、文化的適合性やスキルマッチ度の高い人材を直接発掘できる点が、グローバル採用の大きな武器となります。
② 営業・マーケティング
B2Bマーケターの約89%がLinkedInを営業・リード獲得に活用しており、その効果はFacebookやX(旧Twitter)の合計より277%高いとされます。
ユーザーの約50%以上が意思決定層で、営業担当が適切にターゲティングすれば、高確度の見込み客に直接アプローチ可能です。
Sales Navigatorでは業種・役職・会社規模・地域など複数条件での高度検索ができ、ターゲット企業の動向通知やリードリスト管理も可能なのです。
さらに、リードジェンフォーム付き広告は平均CVRが13%と高く、リード獲得単価はGoogle広告より28%低い事例も報告されています。海外営業では、距離や言語の壁を越えた接点創出と信頼醸成のプラットフォームとして優位性があります。
③ ブランディング:信頼構築
LinkedInユーザーの75%は企業の意思決定に関与する立場にあり、ビジネス情報の信頼度は他SNSより高いとされています。
ブランド広告を閲覧したユーザーの購入意向は33%上昇し、認知と獲得施策を組み合わせた場合はコンバージョン率が6倍に達するというデータもあります。企業ページを充実させるとページビューは5倍、クリック率は11倍に増加するとも言われています。
加えて、社員が自社の投稿をシェアする「エンプロイーアドボカシー」は、公式発信の2倍以上のクリック率を生むこともあります。業界知見や社会貢献活動、企業文化を継続発信することで、見込み顧客・採用候補・パートナー候補の間で「信頼できる企業」というブランドを確立できます。
2.企業のLinkedInアカウントの運用方法
LinkedInで成果を上げるには、企業アカウントの戦略的な運用が不可欠です。
初期設定からコンテンツ投稿、分析・改善、有料機能活用まで、各工程を体系的に実行することで効果が最大化します。
ここでは、実務で再現可能な運用ステップを具体的に解説します。
アカウントの初期設定
企業ページはブランドの顔となるため、ロゴ(推奨400×400px)、カバー画像(1584×396px)、業界キーワード入りの概要文を整備します。
概要は120字以内のキャッチと詳細説明を用意し、会社規模・所在地・Webリンクも明記しましょう。海外市場向けには多言語版ページや地域別Showcaseページを作成し、現地ユーザーへの親和性を高めます。
公開前に社内外で表示確認を行い、誤記やブランド基準の不一致を防止することも忘れずに。LinkedIn公式の調査によれば、情報が充実したページはそうでない場合に比べ閲覧数が30%多く、フォロワー獲得にも直結します。
コンテンツ投稿運用
ターゲットごとに発信内容を明確化します。営業目的なら業界レポートや導入事例、採用目的なら社員インタビューや福利厚生紹介、ブランディングなら企業理念やCSR活動などです。
画像投稿は平均エンゲージメント98%増、動画はシェア率が20倍高いというデータもあるため、適切に活用します。
投稿頻度は週2〜3回を目安に固定曜日・時間帯で配信し、月次カレンダーでテーマを割り振りましょう。国や地域に応じた言語・文化要素を取り入れることで、海外市場での共感度を高めます。
インタラクション運用
LinkedInは双方向性が成果を左右します。自社投稿へのコメントは24時間以内に返信し、ページ管理ビューの「平均返信時間」を短縮しましょう。
業界関係者や見込み顧客の投稿にも積極的に「いいね」やコメントを行い、関係性を構築します。
特に海外営業では、ターゲット企業のキーマンが発信する投稿に対して専門的なコメントを残すことで、認知と信頼を同時に獲得可能。LinkedIn調査では、企業がユーザーコメントに返信した場合、そのブランドへの好感度は平均2倍に向上します。
社員アカウント連携・アンバサダー活用
社員は企業の最良の広告塔です。公式投稿を社内で共有し、再投稿やコメントを促すと、リーチが2倍以上になることもあります。
海外事例では、エンプロイーアドボカシープログラムを導入し、社員が自主的に発信できるテンプレートや素材を提供した事例も多くあります。
特に営業・採用・広報のキーパーソンが積極的に動くと効果が顕著で、信頼度も向上する傾向に。LinkedInデータによれば、社員投稿のクリック率は公式ページの約2倍、リード獲得にも直結します。
ターゲット接点構築
高度検索機能を使い、業種・職種・役職・地域などで見込み客やパートナー候補を特定しましょう。
接続リクエスト時には共通点や関心を盛り込んだカスタムメッセージを添えると承認率が向上します。関連グループへの参加や業界ハッシュタグ(#BtoBMarketingなど)の活用で、接点数と認知を拡大するのもコツです。
Sales Navigator利用時は、保存リードやアカウントへの更新通知を活用し、タイムリーなアプローチを可能にします。
ダイレクトコミュニケーション
既存つながりには通常メッセージ、新規層にはInMailを活用し、直接的なアプローチを行います。
LinkedIn公式データでは、パーソナライズされたInMailの開封率は45%以上、返信率も一般メッセージより高い傾向にあります。
資料リンクや事例動画を添付することで、開封後の行動率が向上します。営業では商談誘導、採用では面談設定など、目的に応じてCTA(行動喚起)を明確に設計することが重要です。
分析と改善
LinkedIn Analyticsで投稿別の表示回数・クリック率・エンゲージメント率を比較し、反応が高いテーマや形式を特定しましょう。
フォロワーの業種・役職・地域分布を把握してターゲット適合度を評価します。
投稿タイミングも過去データから最適化し、反応の多い曜日・時間帯を基準に運用計画を更新。改善サイクル(PDCA)を回すことで、フォロワー数やリード獲得数の継続的な向上が可能です。
有料機能の活用
Sales Navigatorでの高度検索・リード管理、LinkedIn Recruiterでの候補者スカウト、Campaign Managerを使った広告運用など、有料機能は成果の加速に直結します。
リードジェンフォーム付き広告は平均CVR13%、ターゲティング精度は職種や企業規模まで絞れるため、B2Bでは特にROIが高い傾向。
海外営業ではABM(アカウントベースドマーケティング)戦略と組み合わせることで、重点市場や企業への的確なアプローチが可能になります。
3.LinkedIn運用の成功事例
LinkedInは、目的に応じた戦略的な運用で確かな成果を生み出せます。
ここでは、採用・営業・ブランディングの3分野で成果を上げた企業の事例を紹介します。
各社の具体的な取り組みと数値で示された成果から、実践のヒントを得られます。
採用の事例
オムロン株式会社
- 取り組み
AI・ロボティクス分野など高度人材の確保を目的に、LinkedInスカウト機能を活用。転職潜在層や海外在住人材にもアプローチできるよう、LinkedIn公式パートナー企業と連携し、R&D部門立ち上げに合わせた採用プロジェクトを設計。候補者リストはスキル・経験・所在地で精密に抽出し、個別カスタムメッセージで接触。 - 成果
従来手法では接触困難だった人材の採用に成功。採用リードタイムを短縮し、部門立ち上げスケジュールに間に合わせた人員確保を実現。高度専門職のマッチング精度も向上。
アンカー・ジャパン株式会社
- 取り組み
媒体・人材紹介からの依存脱却を目指し、自社で候補者母集団形成〜選考までをコントロール。パッシブ層を狙ったスカウト戦略を採用し、直接的なコミュニケーションで候補者の関心を喚起。社内で採用フローを可視化し、工数を最適化。 - 成果
LinkedIn経由で4名を採用。採用コストの削減と効率化に成功し、企業文化に合致した人材の獲得率が向上。採用スピードも改善。
株式会社SQUEEZE
- 取り組み
創業期に経営陣自らスカウトを実施。スキル適合性に加え、ビジョンや価値観への共感を重視した候補者選定。第三者を介さず直接面談設定まで進めることで、選考スピードと情報精度を確保。 - 成果
3か月で2名採用・2名オファー、オファー承諾率100%を達成。採用コストを大幅に削減し、定着率も向上。
営業の事例
Lincoln Electric
- 取り組み
LinkedIn広告とオーガニック投稿を組み合わせた包括的キャンペーンを展開。ターゲットを意思決定層に絞り、業界レポートや事例記事をSponsored Contentで配信。営業・マーケ両部門が連携し、MQLを即時営業チームへ。 - 成果
MQL獲得目標を167%達成。クリックの73%が意思決定層からで、広告費換算で約7,000ドル分のエンゲージメントを創出。
ブランディングの事例
UDトラックス
- 取り組み
製品情報に加え、社員の日常や国際女性デー・海外マラソン参加などのイベントを発信。現地拠点や多国籍チームの様子をビジュアルで共有し、海外市場でのブランド認知拡大を図る。採用ブランディングと連動し、企業文化や価値観を求職者へ訴求。 - 成果
フォロワー数の持続的増加と応募者数の増加を実現。応募者の企業理解度が向上し、社員の社外発信も活発化。ブランド好感度の向上にもつながった。
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

監修者紹介
中島 嘉一 代表取締役
SNSリンク:https://linktr.ee/nakajima
株式会社コスパ・テクノロジーズ 代表取締役。
愛媛大学情報工学部卒業後、船井電機にて中国駐在し5,000人規模の組織管理とウォルマート向け海外営業を担当。
上海で起業し通算10年の中国ビジネス経験を持つ。Web制作・デジタルマーケティング歴13年以上で現在は英語圏・中華圏を中心とした海外展開支援のスペシャリストとして活動。
多言語Webサイト構築、越境EC、SNS・広告運用を駆使して企業の海外顧客開拓から、国内向けWebサイト制作・ブランディングまで、戦略立案から実行まで一貫サポート。
海外ビジネスに関するセミナーやイベントに登壇するほか、SNS総フォロワー5万人以上、中小機構海外販路開拓アドバイザーとして中小企業から上場企業まで幅広く支援実績を持つ。