
なぜ海外企業は“投稿ではなくDM”を送ってくるのか?LinkedIn営業の文化差に学ぶ
目次
1. 海外企業がLinkedInでDMを重視する理由とは?
投稿は“関係構築”ではなく“ブランディング”の手段と認識されている
多くの海外企業では、LinkedIn投稿は営業ではなくブランディングのための活動として活用されています。企業や個人の専門性・信頼性を高め、間接的に市場内での存在感を示す「名刺のようなもの」として位置付けられているのです。したがって、「投稿を見た相手が自発的に連絡してくれる」ことはあまり期待しておらず、むしろ商談を生む手段としてはDM(ダイレクトメッセージ)の方が優先されています。この違いは、発信の目的が「見込み客を増やすこと」なのか「認知を高めること」なのかという文化的背景の違いにもよるでしょう。日本企業が投稿だけに依存して営業成果を期待する場合、こうした認識ギャップを理解していないと、機会損失を生む可能性もあるのです。
DMは“第一接触”の常識。投稿は“補足資料”のような位置づけ
海外のビジネス環境では、「まずは投稿を見てからDM」という順序は主流ではありません。むしろ「DMこそが営業活動の起点」と考える文化が定着しています。特に欧米では、投稿はあくまで自己紹介や専門性の証明として使われており、商談に直接つなげる行為としては、最初からパーソナライズされたDMを送るケースが見られます。投稿は、そのDMを補足する「事後資料」や「信頼構築要素」として位置づけられます。したがって、投稿でリードが発生しないからといって戦略が失敗しているわけではありません。むしろ、「DM→投稿チェック→返信」という流れの中で投稿が生きる構造が、海外におけるLinkedIn営業の基本サイクルだと言えるのです。
営業は“ストレート”に提案するのがマナーとされている国も多い
欧米諸国におけるビジネス文化では、営業提案は「ストレート」であることがマナーです。相手に遠慮して曖昧な提案をするよりも、自社の強みや提供できる価値を明確に伝える方が誠実と見なされます。たとえば「御社の業務効率化に貢献できる新しい○○ツールをご提案したい」というように、用件をはっきり言うことが好まれます。LinkedInのDMでも同様で、「何が目的の連絡なのか」「相手にどんなメリットがあるのか」を冒頭から明示することが求められます。日本では控えめな姿勢が美徳とされがちですが、海外ではそれが「自信がない」「不明確」と見なされてしまう恐れも。文化の違いを意識したアプローチが求められるのです。
2. 日本企業と海外企業のLinkedIn営業スタイルの違い
日本企業は“投稿重視型”、海外企業は“DM重視型”
日本企業はLinkedIn上での営業活動において、投稿による“間接的アプローチ”を重視する傾向があります。企業の専門性や信頼性を投稿で見せ、興味を持った相手が自発的に反応してくれることを期待するスタイルです。一方、海外企業はその逆で、見込み客を明確に絞り込み、ダイレクトメッセージで接触する“直接アプローチ型”が主流です。この違いの背景には、「押し売りと見られたくない」という日本的な心理と、「良い情報は伝えた者勝ち」という欧米的な合理主義があると考えられます。日本企業が投稿中心の運用にこだわるあまり、積極的なDM活用を避けると、海外企業との商機を逃すリスクがあるため、両者のバランスを見直すことが求められます。
日本企業は“関係構築の前提”が必要、海外企業は“即商談”もありうる
日本では営業活動において「関係性の構築」が重視されるため、見込み顧客にDMを送る前に投稿やプロフィールで信頼を積み上げようとする傾向があります。たとえば、DMの送信前に何度も投稿を見てもらい、「なんとなく知っている存在」となってから声をかけるというスタイルが一般的です。しかし、海外ではそのような前提は必須とされておらず、むしろ有益な提案があれば即DM、即商談という流れが評価されます。スピード重視の文化では「今話を聞いて損はないかどうか」が判断基準であり、営業担当者が“今”アプローチしないことが機会損失と見なされることすらあります。文化の違いを理解したうえで、アプローチのタイミングと方法を柔軟に変えていく必要があります。
“投稿のエンゲージメント”に対する価値観の差
日本では、投稿の「いいね」数や「コメント数」といったエンゲージメント指標を営業成果の手応えと捉える傾向があります。「多くの人に見られた」「業界関係者から反応があった」ことが、一定の達成感につながるからです。しかし、海外ではこの考え方に対してやや懐疑的で、エンゲージメントより「その投稿が商談につながったか」という具体的なアクションを重視します。つまり、評価されるのは“見られた投稿”ではなく、“動かした投稿”です。このギャップを理解せず、エンゲージメントの数字だけを見て「うまくいっている」と判断してしまうと、本来得られるはずだった商談の機会を逃してしまう可能性があります。成果を上げるには、エンゲージメントの“その先”にある行動を引き出す投稿設計が重要です。
3. LinkedIn営業における“文化差”を乗り越えるヒント
ターゲット国ごとのビジネスマナーを把握する
海外営業でLinkedInを活用する際には、国ごとに異なるビジネスマナーや文化的価値観を理解しておくことが非常に重要です。たとえば、米国では「短く要点を伝える」ことが好まれ、長文のDMは読まれずに無視される傾向があります。ドイツでは文法や敬称を重視するなど、フォーマルさが求められます。一方、シンガポールやマレーシアなどの東南アジア諸国では「人とのつながり」や「紹介」が重視され、知らない相手からの連絡には警戒されることもあります。こうした文化の違いを無視してテンプレート的に営業DMを送ると、成果が出ないばかりか、ブランドイメージを損ねる恐れもあるため注意が必要です。国別にアプローチ手法を変えることが、LinkedIn営業を成功させるカギになります。
日本式の“遠回しな表現”は翻訳せず、ロジカルに伝える
多くの日本人は「失礼にならないように」と考えて、遠回しな表現を使いがちです。しかし、それを英語に直訳すると意図が伝わりにくく、逆効果になることがあります。たとえば「もしご興味があればご覧ください」という一見丁寧な言い方は、海外では「要件が曖昧で、なぜ送られてきたのか分からない」と捉えられてしまうことも。海外企業の多くは、要点を簡潔かつ論理的に伝えることを重視しており、DMの冒頭から「なぜあなたに連絡したのか」「どんな価値を提供できるか」を明確に伝えることが求められます。営業の場においては、やわらかさよりも明快さが重視される文化があることを理解し、英語でのやり取りでは“結論→理由→詳細”という順でメッセージを構成すると効果的です。これはLinkedIn営業だけでなく、越境ECやメール提案などにも共通するポイントです。
DMに対する“返信率”を改善するための小さな工夫
海外営業でLinkedInを使う際、DMの返信率を上げるにはいくつかの小さな工夫が大きな違いを生みます。例えば、いきなり営業トークを始めるのではなく、相手の投稿や経歴に触れて「なぜこの人に興味を持ったのか」を最初に伝えると好感度が高まります。また、共通点がある場合はそれを示すだけでも心理的距離が縮まりやすく、返信率向上に寄与します。加えて、DMの内容は簡潔かつ1メッセージ=1目的に絞ることも重要です。長すぎる文章や複数の要求を盛り込むと、読まれずに無視されてしまう可能性があります。返信が来ないのは必ずしも興味がないからではなく、文章設計やタイミングが悪かったケースもあるため、ABテスト的に内容を変えて試す視点も営業活動では効果的です。
4. 日本企業がLinkedIn営業で成果を出すためのアプローチ
“投稿+DM”のハイブリッド運用が成果につながる
日本企業がLinkedIn営業で成果を出すためには、投稿だけでもDMだけでもなく、両者を組み合わせた“ハイブリッド運用”が有効です。まず投稿によって自社の専門性や実績を発信し、相手に「信頼できそう」と思わせる基盤を作ります。そのうえで、ターゲットに対してDMで個別にアプローチすることで、「投稿を見たうえで話しかけてくれた」という信頼感が高まります。また、投稿を見た直後にDMを送れば、記憶が新しいため返信率が上がる傾向もあります。このサイクルを繰り返すことで、見込み客の発見から商談化までの流れがスムーズになります。とくに海外顧客開拓では、接点の数を増やすよりも“印象を重ねて信頼を築く”ことが成果につながります。
営業代行や外部ツールの活用で効率を高める
LinkedIn営業は有効な手法ですが、ターゲット選定・メッセージ作成・配信・分析などをすべて自社で回すのは工数がかかります。特に人手やノウハウが不足している企業にとっては、初動の壁が高く感じられるかもしれません。そこで活用したいのが、営業代行や自動化ツールです。たとえば「Sales Navigator」で精度の高いリストを作り、「AroundDeal」や「Lusha」で連絡先を補完、さらにDM送信を自動化できるツールと組み合わせることで、手間をかけずに多くのリードにアプローチできます。また、LinkedIn営業に慣れた外部パートナーと組むことで、ターゲットの反応傾向や業界別の改善策なども共有してもらえるため、自社の運用力を底上げすることも可能です。
営業活動を“数値化”してPDCAを回す意識を持つ
LinkedIn営業では、感覚的な運用ではなく「どの活動が成果につながっているのか」を把握するための数値化が重要です。たとえば「DMを100通送って何通返信があったか」「投稿を何本公開して何件のDMに自然流入があったか」などの指標を追いかけることで、ボトルネックの可視化が可能になります。このようなデータに基づいてPDCAを回すことで、営業活動は“再現性のある型”として蓄積されていきます。特にBtoB営業では、1件の商談が高単価につながるケースが多いため、1%の改善でも売上インパクトが大きくなります。LinkedInは投稿やDM、プロフィールへのアクセス履歴など多くのデータを持つため、数値化と改善の相性が良い営業プラットフォームです。