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極めた先に神が宿る

2022.10.20
高畑龍一

先日久しぶりに北海道を訪れた。新千歳に降り立つだけで開放感を味わえるから、やはり北海道はいい。高速に乗ってしばくすると、ラジオから「ラリー・ジャパン」の話が流れてきた。2004年から北海道で開催されていた国際格式のラリーである。2010年に中断した後、12年ぶりに今年11月に愛知県と岐阜県をまたいで開催されるのだ。十勝で開催されていた頃に見に行った経験がある身としては、実に感慨深い。

RALLY JAPAN 2022
https://rally-japan.jp/

ラリーほど恐ろしい競技はない。曲がりくねった林道を猛スピードで駆け抜ける。ガードレールなどないから、コースアウトしたら一巻の終わり。クルマや装備が頑丈だから命を落とすことはあまりないそうだが、それでも崖から落ちたらタダでは済まない。何が彼らを駆り立てるのか。十勝を走るラリーカーは神がかって見えた。

見る側は体力勝負だ。観戦ポイントから観戦ポイントまで歩く歩く。ひたすら歩く。コンビニなどはないから水や食料も持ち歩く。無事に目的地に辿り着くと、神がかったラリーカーを拝み見る。そして歩く。修行僧の心境に入れる。

今回の大会には、レジェンドとも言うべき新井選手が参戦するというのも感慨深い。「新井選手の助手席に座ったことがある」というのが数少ない自慢話の一つだからだ。しかし実際は、いざ新井選手のマシンに乗ってから1分と経たずに後悔することになった。前後、左右、そしてたぶん上下のGが強烈なのだ。ジェットコースターのスピードが10倍くらいになった感じ。そうなると最早、速いとか恐いとかではなく、胃の中身が飛び出しそうになるのを堪えるのが精一杯。胃まで飛び出してくるのではないかと思うくらいだった。

たかが15分くらいだと思うが、ようやく停止。頭がクラクラしながら、「すっ、すごいですね〜」と言うと、新井選手は「これでも安全マージンは十二分ですよ」と涼しい顔でおっしゃる。さらに、「運転しますか?」と聞かれたので、思わず「是非」と答えたが、これもすぐに後悔することになった。

まずはクルマを動かせない。普通のMT車のようなシンクロメッシュ機構などないので、きっちり回転を合わせないとギアが噛み合わないのだ。何度もエンストして、なんとか出発。すると今度はステアリングが重い。パワステなんていうヤワなものも付いていないので、めちゃくちゃ重い。それにサスペンションが硬い。リジットサス並みだ。とにかく全体がガッチガチ。クルマというよりも戦闘機だ。

レースカーを作るのは戦闘機を開発するのと同じくらいの技術や情熱が必要だという。素材、精度、空力特性…なんども設計、試作、テストを繰り返し、高みを目指す。エンジニアとドライバーが共振し、アイデアが湧き出て、新しい形と動きが生まれる。そこに人間技を超えた何かを感じるのだ。

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