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リュウグウとブランディング

2022.06.09
高畑龍一

最近で一番のニュースは「『はやぶさ2』が小惑星『リュウグウ』から持ち帰った砂にアミノ酸があった」という話だ。「生命は宇宙からやってきた」というパンスペルミア説を裏付ける証拠になるかもしれず、そうなれば、宇宙には生命体が満ちていて、私たちの遠い親戚がどこかの星にいる可能性があるということになる。

小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った砂から20種以上のアミノ酸

https://news.yahoo.co.jp/articles/6060d50fb479929f94c160e6a664ab354aa13361

この話が人を惹きつけるのは、すべての人、すべての生命の起源に関する話だからだ。

私たちの心理というのは妙なもので、「この方は歌手の○○さんです」と言われると、その人の故郷はどこか、どうして歌に興味を持ったのか、ご両親も音楽関係者なのか、誰がプロデュースしたのかなど、バックグラウンドが気になる。いろいろ知ると親近感が湧いて、応援したくなってくる。

会社も同じことだ。だから、いわゆるブランド企業は、創業者の考え方や会社が発展してきた過程、苦難を乗り越えた逸話などを語る。それらに触れた人は、そのブランドのデザインやテイストに意味を感じるようになり、コアなファンとなる。

過去を語るならば未来も語らなければならない。どこに向かうのか、何を目指すのか。なぜ社会から必要とされるのか。これらはパーパスと呼ばれている(存在意義と訳されることが多い)。原点とパーパスを明確にすることがブランディングであり、これに共感されればファンが増えていく。

ここで難しいのはパーパスだ。そこに正解はないからだ。

高度経済成長の時代は簡単だった。お役所が欧米を研究してグランドデザインを描き、国策銀行が効率的に資金を集め、その資金が財閥系大企業に流れ、下請けに行き渡った。各所でコストや売上を試算すれば「増収増益」が期待できた。なにより、このようにして「増収増益」することは「正」であり、疑いを挟む余地がなかった。

しかし何が「正」かは今や計算できない。

環境問題、国際紛争、資本主義の歪み、技術の進歩など、時代の転換期を迎えているのではないかと思われる問題が山積みだからだ。これらは「儲かるからいい」ということでは良し悪しを判断できない。自社の製品が戦場のドローンに積まれてもいいのか。日本の工場と海外の工場の給料に格差があるのは是か否か。生殖技術にどこまで協力できるのか。いずれも哲学や倫理の問題である。

とても難しいが、この辺から考えて、明確なパーパスを打ち出す必要がある。そうすれば、顧客も増えるし、求職者も増えるし、資金の出し手も増える可能性がある。ただし、以上はそのような短期的なメリットを追求する話ではない。企業のブランディングとは、あくまで企業が末長く存続していくための行為である。

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