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日本入ってる?

2022.03.04
高畑龍一

2010年代、中国では韓国車が大人気だった。安くてカッコいいし、クオリティもまずまずということで、日本車キラーと呼ばれていた。2012年の反日活動も追い風になって、2016年には現代と現代傘下の起亜は合計7.3%のシェアに達した。それが、最近は大苦戦を強いられており、合計1.7%まで落ち込んでいるという。

中国でのシェアが1%に下落した韓国現代自動車、重慶工場も稼働停止
https://www.recordchina.co.jp/b889860-s39-c20-d0195.html

韓国車に先駆けて不調となったのは、例えば三菱車だが、三菱はエンジンを外販するという奇策に出て、500万基以上のエンジンを売りまくった。相手は数多あった中国メーカー。自動車は、シャーシとエンジンを開発するのが大変で、その他のパーツはサプライヤーから調達すれば製造できる(言うほど簡単ではないが)。特に1万点の部品からなるエンジンは、見よう見まねでコピーしたところで同レベルの性能や耐久性が確保できるわけがない。

だからエンジンを自社開発していることが「自動車メーカー」を名乗るための条件とされていたのだが、スーパー合理的精神を有する中国人経営者は「日本のエンジンが手に入るなら使わない手はない」と飛びついたのだ。しかも、三菱の1.5Lや2.0Lのエンジンには定評があった。中国車はあっと言う間に「インテル入っている」ならぬ「三菱入っている」状態になった。

上海時代に仕事で使っていた鄭州日産製の商用バンにも4G94Dという三菱の2.0Lが搭載されていた。低速トルクがあって滑らかで、中国の道路事情にマッチしていると感じた記憶がある。しかも、驚いたことに、このクルマのシャーシはプジョー307のものがベースで、1.6Lモデルにはプジョー製のエンジンが積まれていた。さらに1.5Lモデルがあり、こちらにようやく日産のエンジン。中国メーカーではなくても、もう何が何だか分からない状態だったのである。

その三菱もエンジン外販に見切りをつけてEV対応に舵を切っているとのことだが、「三菱入っている」は中国の自動車史の1ページとなっている。「いいものは売れる」の好例だ。エンジンがなくなっても、iPhoneのように、自動車に使われるパーツやパーツを製造する設備の多くに日本製が選ばれ続けるだろう。日本の製造業の未来は明るい。

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